ブルーアーカイブ

【ブルアカ】あったらいいなブルアカ妄想イベント『動乱の創設記念日~雪原に君臨せし暴軍~』

本編

※pixivでも同様のものを掲載しています。
#ブルーアーカイブ #連河チェリノ 動乱の創設記念日~雪原に君臨せし暴軍~ – MacKeyの小説 – pixiv

プロローグ

~サヤの研究室~

サヤ
サヤ

う~ん……おかしい、カイ先輩たちから押収した分も含めて「若返りの秘薬」の数が管理表と一致しないのだ。

サヤ
サヤ

はぁ……この薬のせいでいろんな騒ぎを起こしちゃったし、こんなことならもっと早くに処分するべきだったのだ……。

サヤ
サヤ

何かの間違いで外に持ち出されていたり……なんて、ぼく様の考えすぎか、もう一度数え直すのだ‼

~レッドウィンター連邦学園・会長執務室~

チェリノ
チェリノ

はぁ……まったく、アイツらまたおいらのことを“チビ”呼ばわりして……。

チェリノ
チェリノ

おいらは、このレッドウィンター連邦学園の偉大なる生徒会長なんだぞ‼粛清してやったとはいえ気が収まらん‼

チェリノ
チェリノ

なんて不愉快なんだ……もういい‼仕事はやめにして気晴らしにテレビでも見るか。

ミライ
ミライ

(放送)今回、我々疑似科学部が自信をもってお勧めするのはこちらの商品―

チェリノ
チェリノ

なんて下らない“ジョークグッズ”なんだ……さすがのおいらでも騙されんぞ……そろそろ別の番組に……。

ミライ
ミライ

(放送)そして今回、新たに紹介するのがこちら「オトナール」です!!

ミライ
ミライ

(放送)あの山海経高級中学校で配合された特殊な漢方の効能によって、体の成長を急速に促し、飲むだけであなたもたちまち素敵な「大人」になることができるのです!!

チェリノ
チェリノ

なに……!!飲むだけで大人にだと⁈

チェリノ
チェリノ

……おっと、おいらとしたことが、さっきあんなものを平然と売ろうとしていた連中のことだ、どうせこれもインチキ商品に違いない‼

ミライ
ミライ

(放送)なんと今ならこのオトナールを、放送を見ている方限定で特別価格でご提供いたします‼この機会をぜひお見逃しなく‼

チェリノ
チェリノ

とはいえ、やはり気になるな……値段も大したことないし……。

チェリノ
チェリノ

あれを飲めば、おいらもカムラッドのような立派な「大人」になってこの学園の書記長としてふさわしい威厳が……?

ミライ
ミライ

(放送)受注期間はこの放送から一週間‼“数量限定”ですから決断はお早めに‼

チェリノ
チェリノ

(ごくり……)

チェリノ
チェリノ

……ええい‼さっきから黙って聞いていれば、“期間限定”だ、“数量限定”だ、なんだと急かしおって‼

チェリノ
チェリノ

……や、やっぱりだめだ!!ふん、この偉大なチェリノ様は、こんな下らない詐欺には決して引っかからないのだ‼

チェリノ
チェリノ

一瞬とはいえ、このおいらの心を惑わすとは危険な奴らめ‼ヴァルキューレにでも通報しておいてやるか。

ミライ
ミライ

(放送)お問い合わせはこちらの番……ちょっと‼放送中に何の用ですか‼

ミライ
ミライ

(放送)……え?ヴァルキューレがすくそこまで……あの薬を追って⁈

チェリノ
チェリノ

……?どうした、何かアクシデントか?

ミライ
ミライ

(放送)待ってください‼あの薬は山海経から流れてきたものに手を加えただけの“ただの栄養剤”じゃ……えっ……ということは“本物”……?

ミライ
ミライ

(放送)……ゴホン!!失礼いたしました。番組の途中ですが、ここで重大なお知らせがあります!!

ミライ
ミライ

(放送)先ほど紹介したこのオトナールですが、なんと本日に限り衝撃の一本1万円でご提供いたします!!

ミライ
ミライ

(放送)受付はこの放送から一時間!!今この放送を見ているそこのあなたは幸運です‼これが正真正銘のラストチャンス、ぜひ理想の姿をその手に……!!

ミライ
ミライ

(放送)突然ですが、番組の予定を変更し、今回の放送はここまでとさせていただきます‼それではまた来週お会いしましょう‼やばい早く逃げなきゃ……

チェリノ
チェリノ

な……何だって⁈今買わなければもう……。もし、あれがおいら以外の手に渡ったら……。

チェリノ
チェリノ

……何だか負けた気がするが、こうしてはいられない‼今すぐ電話を……!!

~数日後~

トモエ
トモエ

それしても遅いですねチェリノちゃん……このままでは、学園の予算会議に遅れてしまいます……。

トモエ
トモエ

寝坊はいつものことですが、少し心配ですね。

~レッドウィンター連邦学園・会長執務室~

トモエ
トモエ

ご休憩中に失礼します会長、この後、予算会議が控えていますのでそろそろ……えっ。

トモエ
トモエ

ちぇ……チェリノちゃん⁈……そのお姿は一体⁈

束の間の平穏

~シャーレの先生のオフィス~

“……ん?トモエからの電話だ。”

トモエ
トモエ

(通信)お忙しいところ申し訳ありません。実は、先生に折り入ってご相談がありまして……。

“トモエからなんて珍しいね。”

“何でも言ってね、力になるよ。”

トモエ
トモエ

(通信)ありがとうございます。しかし、どこからお話しすればよいのか……まずはこちらをご覧ください。

添付された写真を見ると、そこにはかつての面影をわずかに残しながら凛々しく成長(?)したチェリノの姿が写っていた。

“流石成長期、見ないうちに随分大きくなったね‼”

“それにしても凄い完成度だ……有名なコスプレイヤーかな?”

トモエ
トモエ

(通信)先生、私がこんな冗談を言うためにわざわざ連絡したと思いますか?信じられないかもしれませんが、この写真に写っているのは紛れもなくチェリノ会長本人です……。

“うっ……噓だ……信じられない‼”

“最近、忙しかったからかな、きっと悪い夢を見ているに違いない。”

トモエ
トモエ

(通信)先生……一番信じられないのは他でもない私なんですよ……。

それから、トモエに事件の経緯を説明してもらった。ある日突然、チェリノが大きくなったこと、会長執務室で空になった怪しい薬瓶を発見したこと、その後のチェリノの様子など全て……時折、消え入りそうになるトモエの声から彼女が心底不安がっているのが伝わった。

トモエ
トモエ

(通信)医療機関も受診したのですが、この学園の医学では原因を突き止めることが難しいようで……他学園の事情にもお詳しい先生なら何かご存知なのではと思い連絡させていただいた次第です。

“一応、心当たりはあるんだけど……。”

“今回と「正反対」なんだよね……。”

トモエ
トモエ

(通信)やはり何かご存知なのですね……‼それを聞いて少し安心しました……。

トモエ
トモエ

(通信)あのお姿になられてからというもの、まるで人が変わったように、レッドウィンターの生徒会長として誠実に執務に当たられるようになりまして……。

~数日前~

工務部員
工務部員

い……以上が建設のスケジュールとなっております。いかがでしたでしょうかチェリノ会長……?

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

素晴らしい。流石だと言っておこうか。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

この工場はレッドウィンターの発展に決して欠かせないものだ。何よりも優先して建設に注力してほしい……と言いたいところだが、その建設を担う工務部の諸君らもまた、この学園に欠かせない貴重な存在であることもどうか忘れないでいてほしい。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

それだというのに、どうやら私は今まで諸君らに対する敬意が欠けていたようだな……ここで謝罪させてほしい……。

マリナ
マリナ

チェリノ会長……‼

工務部員
工務部員

あの会長が頭を……夢でも見ているのか……?

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

諸君らの働きに対する対価として“配給のプリンを2倍”に……と言ってやりたいところだが、自由と平等をモットーに掲げている以上、それでは他の生徒に示しが付かないのでな。代わりと言っては何だが、諸君らには特別髭勲章を授与しよう。

工務部員
工務部員

身に余る光栄です……チェリノ会長‼これからも工務部として粉骨砕身の覚悟で学園に尽くしてまいります……‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

フフッ……期待しているよ。

トモエ
トモエ

………………。

トモエ
トモエ

(通信)秘書室長として大変喜ばしい事ではあるのですが、どうしても何か引っかかるのです。他の方たちは気付いていないようなのですが、今のチェリノ会長からは、得も言われぬ“不気味さ”を感じるのです……私の杞憂だとよいのですが……。

トモエ
トモエ

(通信)幼稚で横暴で怠惰なチェリノちゃんに戻ってほしいなんて私のエゴかもしれません……しかし、あれが正常だとは思えません。副作用の心配もありますし、“もしもの時”のために一緒に解決策を探していただけませんか?

“分かった、そういうことなら喜んで協力するよ。”

“薬の件はこっちで調査してみるよ。何かあったらまたいつでも連絡してね。”

トモエ
トモエ

(通信)感謝します先生……‼それと、このことはどうかご内密に……仮にも学園を束ねる生徒会長が、正体不明の病に侵されていると他学園に知れ渡れば、隙を見せることになりますから。

“通販番組で買った怪しい薬で「大人」に、か……。”

“まずは、あそこに行って聞いてみよう。”

~レッドウィンター連邦学園・会長執務室~

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

トモエ秘書室長、午後からのスケジュールはどうなっている?

トモエ
トモエ

はい、チェリノ会長、2時間後に学園内の部活視察を予定しております。初めに視察するのは出版部、続いて知識開放前線、兵器開発部という予定になっております。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

そうか、急ですまないが、知識開放前線の視察は日を改めてもらえないかな?今回の視察を実りあるものにするためにも、時間には余裕を持たせたいのだ。

トモエ
トモエ

承知いたしました。知識開放前線にはその旨をお伝えしておきます。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

いつも助かっているよトモエ秘書室長。

トモエ
トモエ

もったいないお言葉ですチェリノ会長、秘書室長として当然の務めですから。

~レッドウィンター連邦学園・工場地帯~

兵器開発部員
兵器開発部員

………………というように、現在、我が部は装甲戦闘車両をはじめとした陸戦兵器開発に特に力を注いでいます。しかし……

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

しかし……?

兵器開発部員
兵器開発部員

会長の前で大変申し上げにくいのですが、現在、予算の関係で開発が滞っておりまして……。特にここ最近は、誰に影響されたのか部員のストライキも多く、兵器の生産数も減少の一途をたどっているというのが現実です。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

そうか、なるほど……ところで工場長、一つ質問があるのだがいいかな?

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

兵器開発の予算を今の“3倍”にすると言えば、諸君らはどれほどのものが作れるかな……?

トモエ
トモエ

ちぇ……チェリノ会長、それは……。

マリナ
マリナ

ハハハッ‼チェリノ会長、こんな時に何の御冗談を‼

マリナ
マリナ

我がレッドウィンター連邦学園は現在、軽度の財政難、食料の配給すら満足に行き届いていないのが現状ですよ。

マリナ
マリナ

学園の軍事力も守るべき生徒がいてこそ‼当面は学園内の経済安定に尽力するほかないでしょう。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

フフッ……間違いないな。すまないマリナ委員長、ほんの出来心で聞いてみただけだ、真に受けないでくれ。

兵器開発部員
兵器開発部員

しかし、そうですねぇ……もし本当にそれほどの予算をいただけるなら、我が部の意地とプライドにかけてキヴォトス三大学園に迫る力を会長に献上することを約束しましょう‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

……素晴らしい。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

………………。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

「その言葉、決して忘れるなよ。」

~ヴァルキューレ警察学校・公安局~

カンナ
カンナ

“飲むだけで大人になる薬”ですか……そのことなら、ミレニアムの生徒が関わっている例の事件のことで間違いないでしょう。丁度我々も調査中でして、いいタイミングで来られましたね先生。

カンナ
カンナ

生憎、犯人は取り逃がしましたが、潜伏場所から発見された顧客情報と薬物の搬送ルートから購入者は全て特定し、医療機関への引き渡しも完了しています。

カンナ
カンナ

今のところ軽度の吐き気やめまいを訴えるだけで、その他に目立った症状は見られないようです。ましてや「大人」になるなど……。

カンナ
カンナ

薬物の成分も調査中ですが、山海経でしか手に入らない漢方薬が多く使われている上に、どの薬も微妙に配合量が違うようで鑑識も苦戦しているようです。まったく困ったものです……。

カンナ
カンナ

近年、キヴォトスでも社会問題になっていますからね、この件を受けて生活安全局には違法ドラッグ乱用防止の啓発活動を―

“(つまり……たった一本の「当たり」が)”

“(よりにもよってチェリノの元に……)”

カンナ
カンナ

どうかされましたか先生?随分顔色が悪いようですが……。

“カンナ、無茶なお願いかもしれないけど……。”

“その薬、何本か譲ってくれないかな……?”

カンナ
カンナ

……いったい何の目的で?

“………………”

カンナ
カンナ

……冗談ですよ。先生のことですから何かお考えがあってのことなのでしょう。話しづらいようでしたら今は聞かないでおきます。

カンナ
カンナ

薬物なら私が鑑識に掛け合っていくつかこちらに回すように手配させましょう。

“恩に着るよ……この埋め合わせは必ず。”

“今度また、あの屋台でも一緒にどうかな?”

カンナ
カンナ

楽しみにしていますよ。

~レッドウィンター連邦学園・会長執務室~

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

トモエ秘書室長、急な用件で済まないが、3日後の会談を午後にずらし、正午に全校生徒へ向けた“演説”をさせてはもらえないだろうか……?

トモエ
トモエ

はぁ……それは構いませんが、どうしてまたこのタイミングで?

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

私は、この身体になってからこれまで失った信用を取り戻そうと尽力してきたつもりだったが、残念ながらまだ学園内での求心力が高いとは言い難い。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

学園の創設記念祭も近いことだ、そこで一度、皆の前に立ち生徒会長としてこの学園の展望を表明することで、以前の私とは違うことを同志たちに改めて示したいのだ。

トモエ
トモエ

チェリノ会長……そういうことでしたら喜んで日程調整の方を進めさせていただきます‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

感謝するよトモエ秘書室長、当日は必ずや“素晴らしい一日”となることだろう……。

絶対零度の独裁者

~レッドウィンター連邦学園・赤ひげ革命広場~

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

おはよう、レッドウィンターの同志諸君。生徒会長の連河チェリノだ。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

学園の創設記念日を間近に控え、各種準備に追われている中、時間を取って済まない。しかし、記念日を目前とした今だからこそ、生徒会長としてこの学園がこれから歩むべき道を改めて示したいと思う。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

この学園の設立から早数百年、キヴォトスは今、大きな転換期を迎えようとしている。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

新興学園であったミレニアムがその目覚ましい技術発展により、ゲヘナやトリニティと並ぶキヴォトス三大学園と呼ばれるようになってから久しく、彼女たちのもたらした発明品の数々は我々の生活をより豊かにした。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

また、シャーレに赴任した先生の尽力により、学園間の交流は活発化し、新たな技術や文化、価値観の流入が諸学園の更なる発展を促した。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

それに対して我々レッドウィンター連邦学園はどうだろうか?度重なるクーデター、頻発する政権交代とそれに伴う外部交渉の停滞、いつまでも足踏みしてばかりだ。観光業に光明を見出した学園もある中、この学園にはそれすらない。この数十年で我々は大きな後れを取った……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

抑圧と反発を繰り返し不安定ながらも今日まで学園を存続させてきた我々だが、学園内の情勢に注視する一方で他学園の動向に少々鈍感になっていたのではないか?この学園さえ平和なら……自分の身の回りさえ……今日さえ平穏に過ごせるならそれでいいと……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

しかし、その考えが命取りになる……‼

トモエ
トモエ

(なんだかチェリノちゃんの様子が……それにこの声……聴いているだけで頭が……‼)

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

会長の失踪により連邦生徒会が機能不全となったことで、これまで絶妙な均衡を保っていたキヴォトスのパワーバランスは崩壊しつつある‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

連邦政府の管理から外れ、今まで押さえつけられていた学園間の競争意識は再燃し、自学園に対する不安や焦燥感は、際限のない軍備拡張へと繋がっていく。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

力を持つ学園は、より強大に……そればかりか、大学園同士で同盟を結び、その力をより盤石なものにしていくだろう。先のエデン条約調印式がその最もたる例だ。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

そして、力なき学園は、選択の余地もないままこれら大学園に蹂躙され、搾取され、支配され続けるのだ‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

私はこのレッドウィンターにそのような弱小学園になってほしくはない。これから始まるであろう熾烈な学園競争に我々は乗り遅れるわけにはいかないのだ‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

何故、私がこれほどまでに焦っているのか、今から映像に映し出されるものを見れば諸君らも少しは理解できるだろう……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

これまで事務局の情報統制により、諸君らが決して見ることのできなかったこの世界の“真実”をお見せしよう。

レッドウィンターの生徒
レッドウィンターの生徒

何なのよあれ……本物の映像なの⁈恐ろしい……。

レッドウィンターの生徒
レッドウィンターの生徒

あれは“兵器”なのか?あんなものが実在しているなんて……。

トモエ
トモエ

それはマズイですよチェリノちゃん……!!そこをどいてください‼今すぐ会長の演説を止めさせてください!!

保安局員
保安局員

しかし……会長から誰であっても通すなと……。

トモエ
トモエ

こんな時に何を言っているのですか⁈このままでは……!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

トリニティで使用された巡航ミサイルに、ミメシスと呼ばれる霊体兵器、そして、アビドス、ゲヘナ両学園が権利を有するという列車砲シェマタ、信じられないかもしれないが、どれも我が学園の諜報員が入手した確かな情報だ‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

極めつけは、“赤い空騒動”の折に使用された“超古代兵器”だ……シャーレの先生や連邦生徒会の協力があったとはいえ、あんな代物を我らレッドウィンターの力なしに、主要学園四校の生徒によって起動させたというではないか……‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

この人智を超えた恐ろしい兵器と、それを操ることができる者がこの学園の外には確かに存在している……世界を終末へと導くボタンが今も生徒の手に委ねられているのだ‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

これで理解できたか‼これら超兵器の銃口がいつこの学園に向けられるのかわからないのだ‼その時、これまで諸君らが当たり前のように享受してきた平和は一瞬にして奪われるだろう‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

その日が来るのは、1年後か……1ヶ月後か……いや!!明日かもしれないのだ……!!我々は討たれる前に討たなければならない‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

我々は武力をもってこの学園の平穏を脅かす全ての障害を排除する‼この学園の力と権威をキヴォトス全土に思い知らせるのだ‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

それに伴い、今日をもって学園全てのリソースを極限まで軍拡に集中させる‼無論、賛同できないという者は学園の反逆者とみなし即刻粛清する‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

しばしの間、諸君らには苦しい生活を強いることになるかもしれないが、それも長くは続くまい。後の戦に勝利すれば自ずと経済は回復する。“配給のプリン3つ”も夢ではないぞ……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

……同志諸君らの懸命な働きを心より期待している。レッドウィンター連邦学園に永久の栄光があらんことを。

マリナ
マリナ

と……トモエ秘書室長、これは……。

トモエ
トモエ

最悪の事態になってしまいました……至急、シャーレの先生に連絡を‼

~サヤの研究室~

“……そういうことがあって。”

“レッドウィンターのチェリノが……。”

サヤ
サヤ

なるほど……数の合わなかった「若返りの秘薬」の謎が少しだけ解けたのだ。まさか巡り巡ってレッドウィンターに流れ着くことになるなんて……。

サヤ
サヤ

薬を持ち逃げした疑いのある部員はこっちでも調査中なのだ。カイ先輩の息のかかった生徒なのか、それとも“別の誰か”なのか……。

サヤ
サヤ

いや、そんなことは後回しでいいのだ。今は解毒薬を調合することが最優先なのだ。交流会の件でチェリノ会長殿には大きな恩がある……ぼく様が必ず助けてみせるのだ……!!

“ありがとうサヤ‼……ん?トモエから連絡だ。”

“動画が添付されてる。こ……これは……。”

サヤ
サヤ

これって……もしかしなくてもかなりヤバイんじゃ……。

サヤ
サヤ

これが、本当にあのチェリノ会長殿なのか……?

サヤ
サヤ

これはマズいのだ……急激に成長した身体と知能に精神が追い付いていない……それにこの声は何なのだ……?動画越しでも伝わる緊張感、成長したのは“身体だけじゃない”……?

サヤ
サヤ

ともかく急ぐのだ‼どうやら事態は、ぼく様たちが思っている以上に深刻になりそうなのだ。

氷の牢獄

~レッドウィンター連邦学園・図書館~

メル
メル

あーその……もう一回言ってくれる?途中から話が頭に入ってこなくて……。

事務局員
事務局員

……廃部だ。本日付で知識開放前線は、「廃部」だと言ったのだ……。

メル
メル

冗談……だよね……?学園の政策が変わったのは知ってるけど、何もいきなり……。

モミジ
モミジ

あんまりですよ‼各部活に散らばったお金を回収するって言ったって、元々私たち知識開放前線には大した予算も出してくれてなかったじゃないですか‼

事務局員
事務局員

お前たちの言いたいことは分かる。だが、これも会長の命令なんだ……私たちも逆らえば何をされるか……。頼む、今はおとなしく命令に従ってくれ。事態が収まれば、部活が再開できるように私も上に掛け合うことを約束する……‼

メル
メル

「収まれば」って……それで、退部させられた私たちは、どうするってわけ?

事務局員
事務局員

文化部のお前たちは、おそらく兵器開発のライン工に回されるだろう。命令に従っている限り、身の安全は保障されているが、もし逆らえば……。

事務局員
事務局員

すでに少なくない数の生徒が反逆罪で粛清されている……。私も本は好きだ、お前たちにはどうか生き残ってほしい。

モミジ
モミジ

どうしましょう……メル先輩……。

~レッドウィンター連邦学園・会長執務室~

事務局員
事務局員

リストにあった部活の解体は順調に進んでいます。会長の予想通り、このままいけば兵器開発の予算は前年比の300%に到達するかと。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

よろしい……次は生徒たちへの配給だが、明日からは―

事務局員
事務局員

失礼します‼チェリノ会長……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

随分慌てているようだが何かあったか?

事務局員
事務局員

それが、工務部の者たちが依頼内容に対して抗議したいとすぐそこまで……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

……そろそろ来る頃だと思っていたよ。通してやれ。

ミノリ
ミノリ

これは一体どういうことだチェリノ会長!!兵器工場の増設……建設するものもそうだが、工期に人員、どれをとってもめちゃくちゃだ!!それに一番気に食わないのは、この予算だ!!私たちにタダで働けというのか⁈

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

初めからそうだと言っているのだが、何か問題でもあるのか?

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

お前たちはまだ自分の置かれている立場が理解できていないようだな。おい、奴らをここに連れてくるのだ。

事務局員
事務局員

……っは……ハイ‼今すぐ‼

ミノリ
ミノリ

…………!!!!

怪我をした工務部員
怪我をした工務部員

ぶ……部長……お久しぶり……ですね……。

ミノリ
ミノリ

み……みんな……お前たち……なんてことを……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

私としては「脅し」のつもりだったんだが、ひょっとすると勇敢な工務部の諸君らにはこの程度では「挨拶」にもならなかったかな……?

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

……もう一度だけ聞こうミノリ部長、やるのか?やらないのか?

ミノリ
ミノリ

あ……あたしは……………………。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

……逃げ出したか。まぁいい、代わりならいくらでもいる。この工場が完成した暁には、我々の計画は次のステージへ移行する。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

我が学園の力を示す良い機会だ。手始めに「ゲヘナ学園」から攻め落とそうではないか……‼

事務局員
事務局員

ゲ……ゲヘナ学園でありますか会長……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

ああそうだ、奴ら万魔殿は、我々との交流会に際してクーデターを企てたに飽き足らず、私が送ってやった彫像を破壊したそうではないか。まったく度し難い連中だ。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

それに私怨だけではない。エデン条約が書き換えられ、列車砲シェマタも破壊されたことで戦力が低下した今が攻め時だ。「空崎ヒナ」の存在だけが少々気がかりだが、どれだけ優れていようとも、一人の生徒の力など学園を支配する我々にとって脅威ではない。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

来たるべき戦いに備えて、周辺の小・中規模校への圧力を強めろ。今は資源がいくらあっても困らない。奴らには、抵抗するなら武力行使も辞さないと伝えておけ。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

レッドウィンターの栄光はすぐそこまで……。

~レッドウィンター連邦学園・雪山~

トモエ
トモエ

さぁ……早く、ここをまっすぐに進めば、今は使用されていない保安局の駐屯地があります。そこでならこの寒さを凌げるはずです。

トモエ
トモエ

皆さんのことは、粛清済みとして事務局の方で処理しておきます。もう追手が来ることはないでしょう。

粛清された事務局員
粛清された事務局員

お手を煩わせて申し訳ありませんトモエ秘書室長……あなたがいなければ我々は今頃……。

トモエ
トモエ

謝らなくてはならないのは私の方です……申し訳ありません、あともう少しだけ耐えてください。チェリノ会長は私が必ず……。

プルルルル……

トモエ
トモエ

この番号は……。

サヤ
サヤ

(通信)ようやくつながったのだ‼ご無沙汰なのだトモエ秘書室長殿‼いつぞやの交流会のお礼を……って、今は謝罪が先か……?

トモエ
トモエ

そのお声は、サヤさんですね……‼もしかしてシャーレの先生からお声を……?

サヤ
サヤ

(通信)そうなのだ‼先生には、材料の買い出しに行ってもらっているのだ。例の薬の解毒薬ならもうじき完成する……‼いろいろと迷惑をかけて申し訳なかったのだ。

トモエ
トモエ

そんな……サヤさんが謝る必要なんてありませんよ。これで突破口を開くことができます‼

トモエ
トモエ

ですが、少し不安なのです……あれがチェリノちゃんの未来の姿だと言うのなら、仮に元に戻ったとしても、いずれまた……。

サヤ
サヤ

(通信)弱気になっちゃダメなのだトモエ殿……!!ぼく様は、あれがチェリノ会長殿の未来の姿だとは思わない。あれは、あるべき過程を飛ばした“偽りの大人”……共に支え合う人たちがそばにいれば、ぼく様の知るチェリノ会長なら絶対にあんな風にはならないのだ……!!

トモエ
トモエ

サヤさん……ありがとうございます。そうですね、こんな時こそ心を強く持たなくては……。

トモエ
トモエ

解毒薬ですが、できるだけ急いでいただけると助かります。軍備拡張も着々と進み、他学園への侵攻が目前に迫っているのです……。今は一日でも惜しいくらいです。

サヤ
サヤ

(通信)分かっているのだ。明日にでもそっちに向かって先生と出発するから、もう少しだけ辛抱してほしいのだ‼

トモエ
トモエ

……待っていますよサヤさん‼

事務局員
事務局員

(通信)……ということですが、どうなされますかチェリノ会長。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

やはり出来すぎた側近を持つのには苦労するな。

~レッドウィンター連邦学園・会長執務室~

トモエ
トモエ

失礼しますチェリノ会長、要件があるとお聞きしたのですが……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

……突然だがトモエ、お前を“反逆罪”で粛清する。

トモエ
トモエ

ど……どうしてですかチェリノ会長、私は何も……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

とぼけても無駄だ、お前の企みに私が気付いていないとでも?裏でこそこそと他学園の生徒と連絡を取り合っていたことは諜報員の調査によって判明している。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

お前ほどの秀でた才能を持つ生徒を私が“ノーマーク”にするわけがないだろう。お前の力には随分と世話になったが、もう用済みだ。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

これまでの実績を考慮して温情をかけてやりたいところだが、それでは他の生徒に示しが付かないのでな。あの時イワン・クパーラのように追放した生徒たちを扇動されても困る、お前は校舎裏の湖に沈めてやる……‼

トモエ
トモエ

チェリノちゃん……。

マリナ
マリナ

…………!!チェリノ会長!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

……何の真似だ?マリナ委員長。

マリナ
マリナ

もう我慢なりません!!こんな政策、絶対に間違っています!!私の知る会長はこんな……お前は一体誰だ!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

何を言い出すのかと思えば……銃を下ろせマリナ委員長。お前は、保安局の委員長として部下からの信頼も厚い、ここで失うのは惜しい。今なら考え直してやるぞ。

マリナ
マリナ

……トモエ秘書室長こちらへ!!

トモエ
トモエ

マリナ委員長⁈

保安局員
保安局員

絶対に逃がすな‼追え‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

……後始末は任せたぞ。

~レッドウィンター連邦学園・雪山~

マリナ
マリナ

しまった……行き止まりか。だが、この崖の下は確か……。

保安局員
保安局員

ここまでです、マリナ委員長、大人しく学園に戻ってください、今の私たち保安局にはあなたが必要です……今なら会長もお許しになるはずです。今一度お考えを……。

マリナ
マリナ

悪いがそのつもりはない……今のレッドウィンターに保安員として守るべきものなどない。トモエ秘書室長、私の手を離さないように……。

トモエ
トモエ

マリナ委員長、一体何をお考えで…………きゃっ‼

保安局員
保安局員

落ちた…………。

保安局員
保安局員

学園に引き上げるぞ、この高さでは捜索の必要もないだろう……。この事を会長に報告するのだ。

トモエ
トモエ

……………………。

トモエ
トモエ

…………はっ‼これは……雪がクッションに……。

マリナ
マリナ

お怪我はありませんか?トモエ秘書室長。

トモエ
トモエ

えぇ……何とか軽い打撲で済みました。……まさかこのことを知っていて?「完璧に学園の地理を把握している」というのは妄言ではなかったのですね。

マリナ
マリナ

委員長として当然です‼しかし、これからどういたしましょうか……連れ出した私が言うのもなんですが、もう学園に帰ることはできそうにありません……。

トモエ
トモエ

“あの場所”へ向かいましょう、あそこがこの学園の最後の“希望”になります。先生にもこのことを連絡しておかなくては。

~サヤの研究室~

“全部廃棄してしまって本当に良かったのサヤ……?”

“サヤにとっても重要な研究なんじゃ……。”

サヤ
サヤ

これでいい……もうこの薬に振り回されるのはごめんなのだ。それに今回の事件でぼく様も少し考え方が変わったのだ。

サヤ
サヤ

ぼく様もカイ先輩も、薬で得られる“結果”ばかりに固執して、あるべきはずの“過程”を蔑ろにしてしまっていたのだ……。大丈夫、研究はまだ始まったばかり、これからは別のアプローチで神仙に至る方法を模索するのだ‼

サヤ
サヤ

さぁいつまでもこうしちゃいられない‼レッドウィンターへ急ぐのだ!!

~レッドウィンター連邦学園・入校管理局~

入校管理局員A
入校管理局員A

ですからレッドウィンターは現在、往来が厳しく制限されておりまして……。

ミレニアム学園の生徒
ミレニアム学園の生徒

冗談じゃない‼早くミレニアムに帰らせてよ‼学会が近いんだから!!

往来客
往来客

お前じゃ話にならない‼今すぐ責任者を出せ!!

入校管理局員A
入校管理局員A

私たちだってこんなことはしたくないのに……。

“トモエから聞いた通り……。”

“なんだか大変なことになってるね……。”

サヤ
サヤ

「ちょっと観光に」なんて言って通してもらえる雰囲気ではないのだ……。

ゲヘナ学園の生徒
ゲヘナ学園の生徒

ちょっと‼金属探知機もX線もパスしたんだから荷物勝手に開けないでよ!!

入校管理局員B
入校管理局員B

そう言われましても……今は往来するすべての荷物に目視でのチェックが義務付けられておりまして……。

サヤ
サヤ

あれじゃ定番の「荷物に隠れて……」なんてことも無理そうなのだ。

サヤ
サヤ

……仕方ない。先生、ぼく様に考えがあるのだ。

サヤ
サヤ

ぼく様が騒ぎを起こして職員の注意を引き付けている間に先生はゲートを突破するのだ……!!

サヤ
サヤ

本当は最後まで付いていきたかったけど、こうなった以上これしか手段はないのだ。それと先生、コレを。

“これが解読薬、レッドウィンター最後の希望……。”

“こんな事をしてサヤは大丈夫なの?”

サヤ
サヤ

安心してほしいのだ‼こういうことは“初めてじゃない”、うまく逃げ切ってみせるのだ!!

“ありがとう……サヤ……。”

“必ず届けてみせるよ……!!”

サヤ
サヤ

そうと決まれば、いっちょひと暴れといくのだ!!

ダダダダダダッッッ!!!!

入校管理局員C
入校管理局員C

なっ……何だあれは⁈

入校管理局員C
入校管理局員C

こちら入校管理局ゲート前、ロビーで銃を乱射するイカれた奴がいる!!至急警備を寄こしてくれ!!

入校管理局員C
入校管理局員C

クソッ‼政府の迷走に今度は空港ジャックか⁈とことんツイてない!!……ん?今、誰か通ったような?……おい‼そこの侵入者止まれ!!

入校管理局員D
入校管理局員D

あれは確かシャーレの……あの方ならもしかすると……。

入校管理局員D
入校管理局員D

おい‼密入校者の追跡は後にしろ‼今は往来客の安全確保が最優先だ!!

入校管理局員D
入校管理局員D

頼んだぞ……この判断が英断であったことを祈る……。

~レッドウィンター連邦学園・山道~

“何とか無事に学園に入校できたのは良いものの……。”

“ここはどこ……?”

忘却の地に集う者たち

~レッドウィンター連邦学園・旧校舎~

“んっ……いつの間に……?”

“さっきまで雪山にいたはずじゃ……。”

ノドカ
ノドカ

先生……!!やっとお目覚めになったのですね!!本当によかった……気絶した状態でここに運び込まれたときはどうなることかと……。

“……ノドカ⁈”

“ということはここは……。”

シグレ
シグレ

そう、ここはレッドウィンターの旧校舎。山道で気を失って倒れていた先生を偶然通りかかったタカネたちが運んでくれたんだよ。この広い学園で遭難中に発見されるなんて相当運がいいよ。

タカネ
タカネ

ご無沙汰しております先生。再びお会いできてうれしい……と言いたいところなのですが、生憎今はそれどころではなくて……。もっと別の形でお会いしたかったですわ。

“感謝するよ……タカネ。”

“それにしても、出版部のタカネたちがどうしてここに?”

ノドカ
ノドカ

それは……。

タカネ
タカネ

……チェリノ会長に「粛清」されたからですわ。

タカネ
タカネ

現在、レッドウィンターは、チェリノ会長の声明発表によって軍備拡張のため突然政策が変更されましたの。それに伴い我々出版部も事務局の監視の元で現政権を賛美する記事“のみ”を出版させられていたのですが……。

タカネ
タカネ

もう我慢ならないと、他の部員たちと共に抗議したのですが、まるで聞く耳を持たない事務局によって有無を言わさず粛清が言い渡されましたの。

タカネ
タカネ

そして、失意のまま旧校舎に向かっていた途中で、倒れていた先生を見かけて今に至る……という訳ですわ。

“事態はそこまで深刻に……。”

“ヤクモはどうしているの?”

タカネ
タカネ

ヤクモ部長は……出版部を守るために事務局の無茶な要求を呑んで部に残ることになりましたわ。今もまだ、粛清を免れた僅かな部員と共にプロパガンダ記事を出版させられていると思いますが、それもいつまでもつか……。

タカネ
タカネ

これからこの学園はどうなるのでしょうか……。優れた指導者を選挙により選出するのは我々有権者の責任ですが、すでに生徒会長の座にいる者がああも豹変してしまっては手の打ちようがありませんわ……。

???
???

あれれ?あんたもここに飛ばされてたんだ。もう少し利口な奴だと思ってたけど。

タカネ
タカネ

その声は、知識開放前線の……‼

メル
メル

“元”だけどね……私らも昨日付で粛清されたのよ。

メル
メル

学園全体が軍拡一色になっている今、図書館の運営なんかに割く予算はないってわけ。

メル
メル

正直、政治とか、他学園の超兵器とか、そんなのよくわかんないけど、ただ一つ言えるのは戦争なんて真っ平御免ってことだけだよ……。

タカネ
タカネ

それには同感ですわ……。

メル
メル

一応「知識開放前線」の名に恥じないように最後まで抵抗は続けたんだけど、結果は御覧の有様だよ。

メル
メル

私らみたいな過激派の部員は全員粛清、残った部員たちもみんな保安局に連れて行かれちゃった……。

モミジ
モミジ

知識と教養は学園の発展に欠かせない重要な基盤なのに……それを捨ててしまった今のレッドウィンターに未来はありません……。

メル
メル

そういうことだから、悪いね、私たちもしばらくここに厄介になるよ。

ノドカ
ノドカ

何だか大所帯になってきましたね……これじゃ特別“クラス”どころの規模じゃなくなりますよ……。

シグレ
シグレ

それだけ、今のチェリノ会長の権威は絶対的ということだね。もうあの学園に会長に歯向かう根性のある生徒はいないんじゃない?

ノドカ
ノドカ

はぁ……どうしてこんなことになってしまったのでしょう。それにしても先生、どうしてあんなところで倒れられていたのですか?それも、そんなケースを大事に抱えながら……。

ノドカたちにここまでの経緯を説明した。

モミジ
モミジ

そんなことがあったのですね。大人になる薬ですか……にわかには信じがたいですが……。

タカネ
タカネ

ビッグニュースどころの騒ぎではありませんわね……。今、出版部に在籍していないことが悔やまれますわ。

メル
メル

余りの変わりっぷりに替え玉説なんかも噂されてたけど、まさか正真正銘チェリノ会長本人だったとはね。

ノドカ
ノドカ

そしてこれが、その解毒薬っていう訳ね。先生の話だし私たちは信じるけど、もしそれが本当だとして……。

ノドカ
ノドカ

どうやってチェリノ会長の元まで届ければいいのでしょうか……。

227号特別クラスの生徒
227号特別クラスの生徒

ノドカちゃん‼お話し中に悪いけど急いで正面玄関に来て‼大変なの……。

ノドカ
ノドカ

今度は一体どこの誰が粛清されたんです……「チョコミント開放前線」ですか、それとも……。

227号特別クラスの生徒
227号特別クラスの生徒

それが……。

~レッドウィンター連邦学園・旧校舎正面玄関~

元保安局員
元保安局員

ふざけるな‼お前たちのせいでこの学園は……私たちは……‼

マリナ
マリナ

頼む……話を聞いてくれ……‼

シグレ
シグレ

あの二人は……‼

ノドカ
ノドカ

何をやっているのですか‼今すぐ銃を下ろしてください‼あの怪我が見えないのですか⁈

元保安局員
元保安局員

そっちこそ何を言っているんだ‼あいつらは……‼

シグレ
シグレ

頭冷やしなよ、あの二人があんな重傷を負ったまま、それも護衛も付けずにこんな所に来た“理由”なんて考えなくても分かるでしょ……。

元保安局員
元保安局員

…………!!すまん……頭に血が上っていた……持ち場に戻るよ。

シグレ
シグレ

ありがとう……分かってくれて。

マリナ
マリナ

頼む……私のことはいい‼トモエ秘書室長を……!!

シグレ
シグレ

やせ我慢しない、あなたも酷い怪我なんだから。

~数時間後~

シグレ
シグレ

これ飲みなよ、温まるよ。安心して、変なものとか入れてないからさ。

マリナ
マリナ

……恩に着るよ。それにしても私たちが学園の追手から逃げている間にこんなに多くの生徒が粛清されていたとは……それに先生まで。

トモエ
トモエ

しかし、こうして先生と合流できたのは不幸中の幸いです。おかげで解毒薬も手に入りました。後は……。

トモエ
トモエ

マリナ委員長、皆さんをロビーに集めていただけませんでしょうか?レッドウィンターの未来を決める会議を始めましょう。

人々の英断

シグレ
シグレ

それで?この悪夢を終わらせる“秘策”があるって聞いたんだけど。

トモエ
トモエ

はい。ここで一度、現在の状況をおさらいしておきましょう。

トモエ
トモエ

現在、レッドウィンターは、チェリノ会長による大幅な政策の変更で、学園のリソースは極限まで軍備拡張に回されています。会長による弾圧で政策に異議を唱える生徒は全て“反逆罪”と見なされ追放されました。準備も着々と進み、他学園への侵攻も計画されているようです……。

トモエ
トモエ

レッドウィンターの主力戦力である保安局も、この大規模な粛清の波を受け、大幅な組織改編を余儀なくされました。戦力を補うために解体した各部活から徴兵し、部員数こそ以前より増えたものの、指揮系統はまだ整っていません。

トモエ
トモエ

特に末端部分の構成が不完全で、本来なら駐在の保安員が対応するようなトラブルでも今は本部が出動せざる負えない状況となっています。

マリナ
マリナ

つまり、遠方で騒ぎを起こせば起こすほど、本部の警備は手薄になる……?

トモエ
トモエ

そうです。我々の目的は「チェリノ会長にサヤさんからいただいた解毒薬を投与する」ただそれだけです。武力による完全制圧は必要ありません。

トモエ
トモエ

ほんの数十分で構いません‼私と先生がチェリノ会長の元にたどり着けるように、皆さんで保安局の戦力を分散させていただきたいのです!!

ノドカ
ノドカ

陽動作戦フェイント・オペレーション」という訳ですか。正面突破だったイワン・クパーラとは真逆ですね!!

シグレ
シグレ

まぁ、そもそも今の私たちに保安局と全力でやりあう力は無いわけだし、それしかないよね。

???
???

(通信)面白いじゃありませんかぁ、その話、我々出版部も一枚噛ませてもらいますよ!!

タカネ
タカネ

部長……⁈何か策でもあるのですか?

ヤクモ
ヤクモ

(通信)えぇ……現在、出版部は事務局監修の元、チェリノ会長を称賛するプロパガンダ記事のみを出版させられている状況です。

ヤクモ
ヤクモ

(通信)それが突然、手のひらを返して会長や現政権を糾弾する記事を出版すればどうなるか……ムフフフ。

ヤクモ
ヤクモ

(通信)多いとは言えずとも、ある程度の保安局員を誘い出すことができるでしょう。ここは中々の僻地ですからね、かなりの時間稼ぎはできると思いますよ~。

トモエ
トモエ

しかし、そんなことをすればあなた方は……。

ヤクモ
ヤクモ

(通信)無論、全員粛清でしょうね。しかし、私もそろそろうんざりしていましてねぇ、命令に従い、言われた通りの内容を執筆するだけの記事など……。

ヤクモ
ヤクモ

(通信)決して義理や人情、大義などのために戦うのではありませんよ。大きな利益が望めるから協力するのです。学園内では検閲の厳しさに比例するように、反戦、政治批判、ゴシップ記事の需要は高まっていますからねぇ。これは売れますよぉ……‼

ヤクモ
ヤクモ

(通信)そして、この戦いに勝利すれば、今度はこの革命運動をもとにした記事が書ける……一度で二度おいしい仕事ではありませんか。出版部の部長としてこのチャンスを逃す手はありません。

ヤクモ
ヤクモ

(通信)こんな日のために“ネタ”はたんまりとため込んでいます。チェリノ会長の“真実”を余すことなく……いえ、“盛りに盛って”世間にお届けいたしましょう!!

タカネ
タカネ

部長……‼そうと決まれば腕が鳴りますわね……!!

メル
メル

そういうことなら私たち知識開放前線も力になるよ‼図書館は閉鎖されたとはいえシステムはまだ生きてるはず、このタイミングで政治批判や革命意識を促す書籍を大量展開すれば、あいつらもすぐに駆けつけてくると思うよ。

メル
メル

「学園がダメになるか ならないかなんだ やってみる価値はありますぜ!」ってやつ?王道だけどやっぱ燃えるよねこういう展開……!!

ノドカ
ノドカ

私も戦います……‼あの生意気なチビに一泡吹かせてやるんだから‼……って、今はチビじゃないんだっけ……。

トモエ
トモエ

皆さん感謝します……!!しかし、これではまだ決定打に欠けます……本人にはすでにお伝えしているのですが……。

トモエ
トモエ

ミノリさん、“例の件”ですが、あれから考えは変わりませんか……?

マリナ
マリナ

ミノリ……?彼女にいったい何を?

トモエ
トモエ

ミノリさんには、その巧みな話術を活かして、学園に残った多くの工務部員やその他生徒を味方につけるべく“演説”を行っていただきたいのです。

トモエ
トモエ

本来ならこういった仕事は私の役割なのですが……事が事ですから、今までチェリノ会長の側近として、決して少なくはない生徒を敵に回してきた私では説得力に欠けるのです……。

ミノリ
ミノリ

できない……やっぱりあたしには無理だ……。あの会長の恐ろしさを前に一度逃げ出してしまったあたしには……。

ミノリ
ミノリ

今のあたしにできることなど何も……。

シグレ
シグレ

ミノリ……。

トモエ
トモエ

……時間まだあります。作戦実行は十日後としましょう。各自、それまでに準備などを進めておいて下さい。

“十日後……その日ってたしか。”

“レッドウィンターの「創設記念日」だったよね。”

トモエ
トモエ

そう、この作戦を実行するのに“ふさわしい日”だとおもいませんか?

タカネ
タカネ

ふふっ……できすぎたストーリーですわね……私が編集者ならこんなネーム一発でボツにしますわ。

モミジ
モミジ

まったくその通りですね。でも、だとしたらこの物語の結末はきっとハッピーエンドです‼

“私も最後まで協力するよ。”

“この物語の結末を見届けるために‼”

~決戦前夜~

~レッドウィンター連邦学園・旧校舎正屋上~

ノドカ
ノドカ

見えますか?あそこに見えるのがこぐま座を構成するポラリスとコカブですよ。

モミジ
モミジ

うわぁ~とっても綺麗です‼普段、部屋にこもってばかりで、夜空を見上げる習慣なんて無かったですが、こうしてみるといいものですね……。

メル
メル

星座にまつわる神話ってのも面白いね。三角関係に禁断の恋……うふふ……創作意欲が搔き立てられるじゃん。

タカネ
タカネ

まったく……見上げたクリエイター根性ですこと……あっ流れ星ですわ‼

ノドカ
ノドカ

あっちにも‼珍しい……こんな時期に流星群だなんて……。

モミジ
モミジ

お願いします……あの時、買えなかったルリエル様の絶版本をどうかもう一度……‼

メル
メル

そこは、明日の勝利を願おうよ……。

~レッドウィンター連邦学園・旧校舎~

シグレ
シグレ

そんなところで難しい顔してないで、ほら、マリナも一杯どう?

マリナ
マリナ

おい、これはまさか……。

シグレ
シグレ

心配しないでただのカンポッドだよ。ただ、ちょっと“発酵”してるかもしれないけど。

マリナ
マリナ

はぁ……お前というやつは……まぁいい、ぜひいただこう。ゴクッ……はぁ……。

シグレ
シグレ

さすが保安委員長様、いい飲みっぷり。さっきからどうしたの?決戦前夜でナーバスにでもなっちゃった?

マリナ
マリナ

ハハッ……まさか、私はかつてレッドウィンターの秩序を守る保安局の委員長を務めた池倉マリナだぞ……‼この程度の窮地どうってことはない‼

マリナ
マリナ

ただ、皆の姿を見て少しセンチメンタルになっていただけだ……。

マリナ
マリナ

今ここに様々な部活の生徒が一堂に会している。これまで良好な関係だったとはとても言えない、揉め事やいざこざも数え切れないほどあった。

マリナ
マリナ

だが、そんな者たちが未曾有の危機に対して、一丸となって立ち向かおうとしている。これこそ本来あるべき学園の姿だと思わないか?

マリナ
マリナ

私も保安局に志願した時、そんな学園に貢献するべくこの身をささげると誓ったはずなのに……どうやら出世に目がくらんでいつの間にか忘れてしまっていたらしい……。

シグレ
シグレ

マリナ……もしかして酔ってる?

マリナ
マリナ

決めたぞ……‼この戦いに勝利した暁には必ずや保安局に復帰して組織の改革を行って見せる‼私は、これまで以上にレッドウィンターのため―

シグレ
シグレ

ふふっ……やっぱり酔ってる……。

~レッドウィンター連邦学園・旧校舎~

“大丈夫ミノリ?みんな心配していたよ。”

“これ、良かったら飲んで。シグレがミノリにって。”

ミノリ
ミノリ

ありがとう先生。そうか……皆はもう、決心がついているのだな……明日の決戦の。

ミノリ
ミノリ

情けない限りだ……あたしだけだ、いつまでも会長の力に怯え、果たすべき使命から逃れようとしているのは……。

トモエ
トモエ

ミノリさん……。

トモエ
トモエ

大丈夫ですよ……気丈にふるまっているように見えますが、怖いのは皆さんだって同じです。作戦前日だというのにまだ誰も眠りについていないのがその証拠です。そして、私もその一人……。

トモエ
トモエ

それでも皆さんが希望を捨てずにいられるのは、ここにいる皆が、互いに使命を果たすだけの力と覚悟があると信じ合っているからなのでしょう。

トモエ
トモエ

マリナ委員長となら……先生となら……そして、ミノリさん……あなたとなら必ず成し遂げられると……。

トモエ
トモエ

最後に人々を突き動かすものは、「真実」でも「嘘」でもなく、信じたいと願う「心」なのでしょうね。フフッ……何だか私らしくない言葉ですね……。

ミノリ
ミノリ

トモエ秘書室長……。

“ここにいる誰もがミノリのことを信じているよ。”

“だからミノリも、みんなのことを信じてあげてくれないかな?”

ミノリ
ミノリ

先生……。

“私からもお願いするよ。”

“シャーレの先生としてではなく、共に闘う「同志」として。”

ミノリ
ミノリ

あたしとしたことが……闘争心を失い、権力者の圧力に屈したばかりか、その権力の権化のような二人に説得までされてしまうとはな……。

ミノリ
ミノリ

おかげでようやく目が覚めた。あたしも皆を信じ、闘おう……。労働者としてではなく、この学園の一人の生徒として‼

ミノリ
ミノリ

こうしてはいられない‼早速明日の演説の原稿を書き上げなくては‼

“これで役者は揃った……。”

“いよいよ明日か……。”

動乱の創設記念日

~レッドウィンター連邦学園・会長執務室~

事務局員A
事務局員A

チェリノ会長……!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

こんな早朝から何の用だ?

事務局員A
事務局員A

そ……それが……まずはこちらの新聞をご覧ください……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

な、なんだ……これは⁈

~レッドウィンター連邦学園・印刷所~

ヤクモ
ヤクモ

さぁさぁ皆さん、ここが正念場ですよ。刷って刷って刷りまくるのです‼伝記、風刺画、漫画、小説、フォーマットは何でも構いません。あらゆる手段を講じてチェリノ会長を糾弾するのです!!

ヤクモ
ヤクモ

すでに我々の動きは事務局に察知されてることでしょう。時間が惜しい、手の空いている者は手書きでもいい!!一人でも多くの生徒に会長の真実、そしてその愚行を伝えるのです!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

馬鹿な……監視に付かせていた保安員は何をやっていたのだ……。

事務局員A
事務局員A

それが……数時間前から連絡が途絶えておりまして……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

愚か者め!!定期報告は怠るなとあれほど言ったではないか……!!

事務局員B
事務局員B

チェリノ会長……!!知識開放前線が閉館したはずの図書館を無断で開放し、規制対象の書籍の貸し出しを行っているようです!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

何だと⁈今度は、知識開放前線が……。

~レッドウィンター連邦学園・図書館~

メル
メル

さぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい‼今日限りで、事務局に規制されてた本を一気に大放出しちゃうよ~‼貸出制限なんてお堅いことは今は無し‼ジャンジャン持ってってお友達にも見せてあげちゃってよ!!

メル
メル

学生証の提示も要らないから足もつかない‼今日は安心して反戦思想にどっぷり浸かるといいよ。

モミジ
モミジ

凄い行列ですメル先輩‼本が飛ぶように借りられていきます‼まるで壁サーにでもなった気分ですよ!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

今すぐ奴らの行為を止めるのだ!!生かしたまま連れてこいなどとは言わん、徹底的に叩き潰せ‼他の生徒への見せしめにしてやるのだ!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

ただでさえこれまでの圧政で反政府意識が高まっているというのに、あんなことをされてはたまらん……力と恐怖で押さえつけていた民意が暴走する前に片を付けなくては……。

事務局員C
事務局員C

チェリノ会長!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

今度は一体どこのどいつだ……‼「唐揚げにレモンをかけることを許さない革命家集団」か、それとも……。

事務局員C
事務局員C

それが……227号特別クラスの生徒が“密造酒”と“シャーレの先生のスナップ写真”を売りさばいているとのことで……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

気でも狂ったか……もはや政治とは何の関係もないではないか……。

~レッドウィンター連邦学園・中央通り~

シグレ
シグレ

やぁみんな、こんな苦しいご時世じゃ日々の楽しみを見つけるのにも苦労するでしょ。どうかな?ここで“一杯飲んで”嫌な気持ちともおさらばしてみない?

シグレ
シグレ

安くしとくよ~今ならオマケであのシャーレの先生の写真も……。

ノドカ
ノドカ

ねぇ……シグレちゃん、私たちだけ何か違うような気がするんだけど……。

シグレ
シグレ

気にしちゃだめだよノドカ。それに、私たちが保安局の気を引く手段なんてこれくらいしかないでしょ。ほら、いい感じに注目を浴びてるよ、そろそろ通報されてる頃かな。

ノドカ
ノドカ

はぁ……これじゃあ、たとえチェリノ会長を倒しても私たちは227号特別クラスのままです……。

シグレ
シグレ

そんなに気を落とさないでノドカ。学園が無くなちゃったら停学どころじゃなくなるんだし、この戦いに勝ったらせいぜい笑顔で帰ってやろうよ。

ノドカ
ノドカ

それもそうだね……よし‼そうと決まれば今のうちにしっかりと売り込んでおいて、旧校舎での生活に備えなきゃ‼

~レッドウィンター連邦学園・旧校舎~

トモエ
トモエ

作戦は順調に進んでいるようですね、あと少しです。先生もそろそろご覚悟を決めておいた方がよろしいかと。

マリナ
マリナ

大丈夫か、ミノリ……?おい、そのカンポットは……。

ミノリ
ミノリ

あぁ……今朝、シグレからもらったんだ、緊張した時に飲むといいって……。「少し発酵しているかもしれない」なんて、アイツは言っていたが。

マリナ
マリナ

アイツらしい激励だ。

ミノリ
ミノリ

そうだな……後でしっかりと本人に返さなくては。そのためにも先生、この作戦、必ず成功させよう……!!

~レッドウィンター連邦学園・印刷所~

タカネ
タカネ

ヤクモ部長、もう限界ですわ……‼そろそろ逃げましょう‼

ヤクモ
ヤクモ

今更どこへ逃げようというのです?私は最後までここに残って戦いますよ。

タカネ
タカネ

何を言っているのですか⁈部長らしくないではありませんか……‼命あっての物種ですよ‼

ヤクモ
ヤクモ

そうかもしれませんねぇ、しかし、私も皆さんの熱にあてられてしまったようだ……。

ヤクモ
ヤクモ

今回の騒動ですでに部の多くの財産を廃棄させられている……これ以上、やらせはしませんよ……‼

ヤクモ
ヤクモ

この戦いで無事に生き残れば、私のこの勇姿を称える映画でも製作してやろうじゃないですか!!

タカネ
タカネ

まったく……演者が一人では寂しくなくて?私も出版部の一人だということをお忘れなく。

ヤクモ
ヤクモ

あなたも変わったお人だ……いいでしょう、後世に語り継ぐためには“目撃者”が必要ですからね。最後まで付き合っていただきますよ!!

~レッドウィンター連邦学園・図書館~

メル
メル

前回はあっさりやられたけど、今回は覚悟が違うんだから‼

メル
メル

こんな学園じゃおちおち創作活動もできやしない‼こっちはクリエイター生命かかってんのよ‼負ける訳にはいかないっての‼

メル
メル

日陰者を本気で怒らせると怖いことをたっぷりと思い知らせてやるんだから!!

モミジ
モミジ

本の申請を却下され続けた恨みここで晴らさせてもらいますよ……‼

モミジ
モミジ

それにしてもメル先輩、私たちも案外やれますね……!!どうです、次の作品は趣向を変えて王道のバトルものなんていかがですか?

メル
メル

いいねぇ、それ……インスピレーション爆湧きだよ‼この経験を創作に生かすためにも必ず生きて帰るよ……!!

~レッドウィンター連邦学園・会長執務室~

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

それにしてもてこずらせる……‼しかし、なぜ今になって……しかも同じタイミングで。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

突発的に起こったデモに触発されたわけではない、明らかに何者かの指示によって計画的に動いている。勝算があるとでもいうのか……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

誰が一体何のために。まったく……どいつもこいつも学園から遠く離れた場所で騒ぎを起こしおって……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

………………。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

待てよ……遠く“離れた”だと……?しまった……!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

デモの鎮圧に向かわせた保安局員たちを今すぐに呼び戻せ!!奴らの狙いはこの事務局だ!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

もうじき本隊がこちらにやってくるはずだ。出版部どもの騒ぎは、保安局員たちを本部から引き離すための陽動作戦フェイント・オペレーションだ!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

私としたことが抜かったか……こちらの組織体系を把握した上での動き、間違いない、生きていたのだな佐城トモエ……!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

扇動し味方につけた生徒たちを囮に使うとは……あの時イワン・クパーラとは違うとでも言いたいのか?いいだろう、相手になってやる……!!

~レッドウィンター連邦学園・印刷所~

タカネ
タカネ

ご覧ください部長‼保安局が撤退していきますわ‼

ヤクモ
ヤクモ

(諦めて帰っていったわけではなさそうですねぇ……何か“焦っている”ような様子でしたが……まさか……‼)

ヤクモ
ヤクモ

メルさん、そちらの状況はどうなっていますか?

メル
メル

(通信)おっ、いい時に電話してきたじゃん、こっちはバッチリだよ‼保安局の奴ら急にしっぽ巻いて逃げてったよ。どう?今度うちと共同制作で映画でも……って聞いてる?

ヤクモ
ヤクモ

やはり……これはマズイですよぉ……。

トモエ
トモエ

(通信)どうされましたか?ヤクモ部長。

ヤクモ
ヤクモ

(通信)トモエ秘書室長、要件だけお伝えします。学園への突入を予定時刻より早めてください!!どうやら我々の目論見に勘付かれたようです、保安局の撤退を確認しました、おそらく本部へ合流するつもりかと……。

ヤクモ
ヤクモ

(通信)我々も体勢を立て直し次第、そちらへ合流します。

トモエ
トモエ

了解です……やるじゃありませんかチェリノちゃん……!!

~レッドウィンター連邦学園・赤ひげ革命広場~

元保安局員
元保安局員

前進するんだ‼一歩も引くんじゃない‼マリナ委員長たちの道を切り開くのだ……‼

ノドカ
ノドカ

うぅ、分かってはいたけど保安局は強い……やっぱり素人の私たちじゃ相手になんか……。

シグレ
シグレ

弱音を吐いてる場合じゃないよノドカ。それに、あちらさんを見てみなよ。

シグレ
シグレ

さっきから使ってる武器も出てくる兵器も古いものばかり、他学園への侵攻のために出し惜しみしてるんだ。向こうが油断している今がチャンスだよ。

ノドカ
ノドカ

シグレちゃん冷静……。

シグレ
シグレ

とはいえ、このままじゃキツイね。いったんどこかに退いて体勢を立て直そう。

~レッドウィンター連邦学園・工場地帯~

ノドカ
ノドカ

はぁ……はぁ……ここは、工場?

シグレ
シグレ

みたいだね、呆れた……こんな時にも兵器作ってるんだ。

シグレ
シグレ

でも騒ぎのおかげで警備は少ないみたい、何か利用できそうなものを拝借していこう。

ノドカ
ノドカ

シグレちゃん‼あそこ‼

シグレ
シグレ

あれは……。

人を突き動かすものは

ミノリ
ミノリ

そろそろか……。原稿は今朝完成したばかりだ、ろくに練習もできていない……あたしのこの演説で戦況が、学園の未来が決まる……。かつてメガホンを手にしてこれほど緊張したことがあっただろうか……。

ミノリ
ミノリ

いや、怖気づいている場合じゃないな……力を借りるぞシグレ‼うぐっ……ごくっ……。

ミノリ
ミノリ

………………。

ミノリ
ミノリ

みんな聞いてくれ……‼あたしは、レッドウィンター連邦学園工務部部長の安守ミノリだ。

工務部員
工務部員

ミノリ部長……⁈失踪したはずじゃ……。

ミノリ
ミノリ

あたしはここでレッドウィンターの一生徒としての意見を表明する。この学園政策は誤っている‼チェリノ会長は、今すぐにこの愚行を止めるべきだ‼

保安局員
保安局員

アイツは何を言っているんだ⁈今すぐ奴を止めろ‼

元工務部員
元工務部員

やらせるか‼ミノリ部長の邪魔はさせない……‼

保安局員
保安局員

くっ……‼コイツらいったいどこから……。

ミノリ
ミノリ

「すべての生徒には意見を表する権利がある」かつて会長はそう言った。だが、今のこの状況はどうだ?生徒の悲痛な叫びには耳を貸さず、その権利を踏みにじり、戦争と言う破滅への道を真っすぐに突き進んでいる。自由と平等とはなんだ?本当にこれが皆の望んだ学園なのか?

ミノリ
ミノリ

これを見てほしい‼チェリノ会長の豹変とその愚行は全て、薬物によって肥大化した会長の虚栄心と愛国心が暴走してしまった結果に過ぎないんだ‼この政策は、決して会長の本意ではない‼

ミノリ
ミノリ

皆も気付いているだろう。我々が知る幼稚で横暴で怠惰で、そして「偉大な」チェリノ会長ならこんなことはしない筈だと。

ミノリ
ミノリ

だがそれももう終わりだ。我々は、シャーレの先生とトモエ秘書室長の指揮のもと、レッドウィンター史上最大の作戦を開始する‼

ミノリ
ミノリ

この悪夢を終わらせ、我々の会長を取り戻すための解毒薬が今、シャーレの先生の手にある。皆でその道を切り開いて欲しい‼一人でも多くの力が必要だ、どうかあたしたちに手を貸してほしい‼

工務部員
工務部員

でも……会長が元に戻ったらレッドウィンターは弱小学園のまま……。そう遠くない未来に私たちはあの超兵器によって……だったら……。

ミノリ
ミノリ

それもチェリノ会長の印象操作だ‼皆の見た超兵器の多くはすでに放棄、破壊されている。他ならぬ生徒の意思によって‼誰も武力による支配など望んでいない‼

ミノリ
ミノリ

目を覚ますんだ‼「障害となる学園を全て打ち倒せばそれで平和が訪れる?」それは違う。今度はあたしたちが狙われる立ち場になる。

ミノリ
ミノリ

終わりのない戦いと悲劇の連鎖の渦にこの学園は巻き込まれようとしている‼

ミノリ
ミノリ

だが今ならそれを止められる……‼その力を、あたしたちは、皆は持っているんだ……‼

ミノリ
ミノリ

今日はレッドウィンターの創設記念日、これは偶然か?いや、必然に違いない。

ミノリ
ミノリ

あたしたちは試されている。皆が一丸となってこの未曾有の危機を乗り越え、今日と言う記念すべき日に再び自由と平等の精神を示せるかを‼争い合わなくともこの学園をより良くする方法は必ずあるはずだ‼

ミノリ
ミノリ

同志たちよ、今こそ立ち上がる時だ‼そして、勝ち取ろう「あたしたちの権利」を‼つかみ取ろう「学園の未来」を‼そして守り抜こう「キヴォトスの平和」を‼

ミノリ
ミノリ

今日という日が、あたしたち生徒が確固たる意志を示した日として永久に語り伝えられる、そんな最高の創設記念日にしよう!!!!

うおおおおおおお!!!!!!!!

工務部員
工務部員

そうだー‼戦争なんて真っ平御免だ‼

保安局員
保安局員

私たちは会長の駒じゃない‼私たちも学園のために戦うぞ‼

トモエ
トモエ

やりましたね、ミノリさん……‼

マリナ
マリナ

凄い数だ……。演説で向こうの士気も低下している。これなら……‼

~レッドウィンター連邦学園・会長執務室~

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

そうまでして私の邪魔をするか‼ぐぅっっ……この愚民どもが……!!!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

戦車隊を呼び出せ‼それもありったけだ‼奴らを全員血祭りにあげなければ気が収まらん……‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

目にものを見せてやる……力の差を思い知るがいい‼

メル
メル

よっしゃー‼このままガンガン行こう……ってあれ?向こうに見えるのってまさか……。

タカネ
タカネ

戦車隊……そんな、ここまで来て……。

トモエ
トモエ

………………‼

ドカーン!!!!

“ゴホッ……目の前の戦車があっという間に……。”

“いったい何が……。”

ノドカ
ノドカ

先生!!正面の戦車隊は私たちに任せて先に行ってください!!

トモエ
トモエ

ノドカさん……!!

“あの戦車どこかでみたような……。”

“粛清君1号⁈”

シグレ
シグレ

まさか私たちがこれ粛清君1号に乗ってチェリノ会長を打倒する日が訪れるなんて、なんというか……。

ノドカ
ノドカ

シグレちゃん、呑気なこと言ってないで早く次弾装填してください!!次の戦車隊が来てしまいます‼

シグレ
シグレ

はいはい、言われなくとも……‼

ノドカ
ノドカ

えっへーんだ‼こっちは、あの見栄っ張りな会長が威信をかけて製造させたワンオフモデルなんだから‼そこら辺の旧式モデルになんか負けるもんですか‼

シグレ
シグレ

そういうことだから、グッドラック、先生‼

マリナ
マリナ

お前たち……行こう先生……‼

~レッドウィンター連邦学園・会長執務室~

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

久しぶりだなカムラッド。だが、嬉しくない再会だ。

“それはお互い様だよチェリノ”

“お願いだから、今すぐこんな無茶な政策を止めてほしい”

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

いくらカムラッドの頼みとはいえ、それは聞けないな。それに、“止めてほしい”だと……?カムラッドも酷なことを言うじゃないか。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

止まるべきなのは我々ではなく、奴らキヴォトス三大校の方ではないのか?

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

あんな武力を有し、日に日にその勢力を拡大していく中で、何が学園間の協調だ、何がキヴォトスの平和のためだ、笑わせるな!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

その気になればいつでも力でねじ伏せられるという傲慢さが生む巧言に私は騙されんぞ。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

私には、生徒会長としてこの学園を導く“使命”があるのだ‼邪魔をしてくれるなカムラッドよ。

マリナ
マリナ

(なんだ⁈聞いているだけで頭が……まずい、トモエ秘書室長も会長の話に聞き入ってしまっている……このままでは‼)

ダダダダダダッッッ!!!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

何だと……⁈

トモエ
トモエ

マリナ委員長⁈

マリナ
マリナ

目を覚ましてくださいトモエ室長‼我々の目的をお忘れですか⁈我々はチェリノ会長のご高説を聞きに来たのではありません!!

マリナ
マリナ

これが会長の狙いです‼こうして時間を稼いでいる間に親衛隊の到着を待っているのですよ!!

トモエ
トモエ

………………‼

マリナ
マリナ

らしくないではありませんか、あなたがこんなアジテーションに惑わされるなんて。

マリナ
マリナ

「レッドウィンター連邦学園では、流れ続けるこの時間もまた財産の一つ」そうでしたよね、トモエ秘書室長‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

チッ……突撃しか能のない奴だと思っていたが、やるじゃないか。伊達に保安局委員長を勤めていた訳ではないようだな!!

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

いいだろう……私自らが相手になってやる‼貴様ら三人を相手にするなど造作もないわ‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

敵として直接相見えるのは初めてだなカムラッド。見せてもらおうか本当の「大人の力」というものを。さぁ……行くぞ!!!!

トモエ
トモエ

これが最後の戦いです……行きましょう‼先生!!

帰ってきた優しい(?)生徒会長

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

まだ……まだだ……!!ま……まだ……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

レッドウィンターの栄光は……すぐ……そこまで……。

マリナ
マリナ

馬鹿な……まだ立てるというのか、奴は“不死身”なのか……。

トモエ
トモエ

今です!!先生、マリナ委員長、チェリノちゃんの体を……‼

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

は、離せ……!!何をするつもりだ!!……おい、その手に持っている物は何だ⁈

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

待ってくれ……や、止めるんだ……!!私は……おいらは……。

チェリノ(成長後)
チェリノ(成長後)

注射が苦手なんだー!!!!!!

トモエ
トモエ

お願い……チェリノちゃん、どうか元に戻ってください……!!

“チェリノの身体が……。”

“みるみる小さく……。”

マリナ
マリナ

成功……したのか……?

チェリノ
チェリノ

…………うっ、何だか頭がくらくらする。って、おい‼どうしておいらは、お前たちの下敷きになっているのだ⁉重くてかなわん‼早くそこをどけ‼

チェリノ
チェリノ

それにこの服はなんだ、ぶかぶかじゃないか……。そうか、分かったぞ‼おいらが昼寝している間にイタズラでもしようとしたんだろう?

チェリノ
チェリノ

いい度胸だ‼先生もまとめて全員「粛清」してやる‼

マリナ
マリナ

(ビクッ……‼)

チェリノ
チェリノ

聞いて驚くな、今回の罰は……

チェリノ
チェリノ

トイレ掃除一ヶ月だ‼どうだ?恐ろしくて声も出ないだろう‼

マリナ
マリナ

………………。

マリナ
マリナ

か……会長!!!!やります、やらせていただきます‼この池倉マリナ、一ヶ月でも一年でもトイレを磨き続けますとも……‼

トモエ
トモエ

ようやく戻ったのですねチェリノちゃん……。

チェリノ
チェリノ

どうしてコイツらは、粛清されたというのに嬉しそうなんだ⁉気でも狂ったか……。

“ふぅ……これで一件落着かな。”

“でも、何かを忘れているような……。”

トモエ
トモエ

はっ……‼こうして喜んでいる場合ではありません。外で戦っている皆さんにこのことを伝えなくては‼

~レッドウィンター連邦学園・赤ひげ革命広場~

シグレ
シグレ

これで弾切れか……今度こそお手上げかな。

ノドカ
ノドカ

うぅ……最後に水で薄めていない本物のプリンが食べたかったです……。

メル
メル

くっ……殺すなら殺せ……‼

モミジ
モミジ

洒落になってませんよ先輩……。

全ての生徒たちに告ぐ!!!!

ミノリ
ミノリ

この声は……。

チェリノ
チェリノ

(放送)おいらはレッドウィンター連邦学園の生徒会長、連河チェリノだ。同志諸君よ良く聞け。今すぐに全ての戦闘行為を中止し、武装を解除、負傷者の救護に全力で当たるのだ‼

チェリノ
チェリノ

(放送)そして、ただ今をもって全ての政策を見直し、軍備拡張に伴うあらゆる制限を解除することをここに宣言する。

チェリノ
チェリノ

(放送)……すまない、ようやく目が覚めた。今日は祝うべき記念日だ、戦いはもう終わりにしようではないか同志たちよ。

チェリノ
チェリノ

………………。

チェリノ
チェリノ

こ……これでいいのかトモエ秘書室長⁉頼むからその銃を下ろしてくれないか……。

トモエ
トモエ

はい‼良く出来ましたチェリノ会長♪

タカネ
タカネ

今の聞きましたか部長‼

ヤクモ
ヤクモ

どうやら上手くいったようですね……。

工務部員
工務部員

か……勝った、私たちは……勝ったんだ‼

保安局員
保安局員

良かった……もう、戦わなくて済むんだな……。

マリナ
マリナ

ありがとう先生……。長かった吹雪がもうじき止む、本当の創設記念日がこれから始まるのだな……。

それから、レッドウィンターでは創設記念日と事件の収束を祝した祭りが三日三晩続いた。後にこの戦いを題材にした映画や書籍が数多く出回ったが、腹を立てたチェリノによって回収騒ぎになったのは、また別のお話。

~レッドウィンター連邦学園・会長執務室~

チェリノ
チェリノ

はぁ……まったく、アイツら創設記念祭では「私たちの生徒会長が帰ってきた」だの「私も粛清してほしい」だの散々おいらのことをおだてておいて、一週間も経てば元通りではないか……。

チェリノ
チェリノ

おいらも勢いに流されて調子に乗っていたが、大勢の負傷者や、急に増えた兵器については結局誰も教えてくれないし……。

チェリノ
チェリノ

なんて不愉快なんだ……もういい‼仕事はやめにして気晴らしにテレビでも見るか。

ミライ
ミライ

(放送)今回、我々疑似科学部が自信をもってお勧めするのはこちらの商品―

チェリノ
チェリノ

ほうほう……これは興味深いな。これさえあればおいらも……。

チェリノ
チェリノ

今度こそ「おいらの権威を示す時が来たな‼」

動乱の創設記念日~雪原に君臨せし暴軍~ 完

???
???

……はい、私です。ええ……例の薬物の臨床実験は上手くいったようです。

???
???

複数のサンプルをもとに、この薬物を欲する生徒の性質を把握し、経過を観察するのが本来の予定でしたが、まさかレッドウィンターに流れ着くとは……。おかげで研究がずいぶんと進展しました。“面白い効果”も確認できたことですし……。

???
???

疑似科学部の者たちはこちらで匿っています。最後まで自分たちが運び屋ベクターであることに気づかなかったようです。利用しがいのある連中です。

???
???

……ええ。しかし、薬物の効果には不確実な部分も多く、量産化には課題が多く残ります。やはり“あの女”の協力が必要かと……。

???
???

……はい。引き続き計画を進めます。次の対象となる学園にはすでに配下の者を向かわせています。……ええ、この力があれば、いずれキヴォトスは貴方の手に……。

???
???

「教授」

あとがき

拙い物語でしたが最後まで読んでいただきありがとうございました。

物語の構想自体は自警団SSを上げた時からあったのですが、温めているうちに夏が過ぎ冬になってしまっていた……。

前回のSSが、汚名を着せられながら孤軍奮闘する自警団、一言で悪と決めつけづらいヴィランなど、ほんのり陰のある物語だったので、次はそれと対になるように分かり易い巨悪に学園全体で立ち向かう王道ストーリーが書きたいと思ったのがこの物語を書いたきっかけでした。

前回の反省点だった「先生の影が薄すぎる問題」も意識しながらなんとか形にできて良かったと思います。

コメント欄やSNSなどで感想をもらえるとすごく励みになります。ぜひあなたの「レッドウィンター愛」をお聞かせください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました