作品概要
❝これからも仲良くしてあげようじゃないエロボディーを描くための作画資料として❞
(引用/九朗.『わたしのために脱ぎなさい!』第1巻.KADOKAWA.2018年.19頁)
『わたしのために脱ぎなさいっ!』は、著者である九朗氏による漫画作品です。(既刊6巻/2023年8月12日現在)
『コミックキューン』(KADOKAWA)にて、2018年2月号でのゲスト掲載の後、2018年6月号から2023年8月12日現在まで連載中です。
本作品は、高校1年生にして天涯孤独になってしまい、生活費を稼ぐため成年向け漫画を描かざるを負えなくなった主人公、二ノ瀬しずく(にのせ しずく)が資料不足による作品のマンネリ化を打開するべく「お友達」を作画資料にして奮闘する様子を描いたコメディ作品です。
氏によって描かれた艶美で肉感的な登場人たちと、話数を重ねる毎に増していく青年誌の限界を攻めた過激な性的表現が特徴です。
ここでは、本作品の魅力を感想・考察を交えつつ紹介していきたいと思います。
あらすじ
お友達は作画資料!? JKエロマンガ家の起死回生コメディ♡
人見知りな女の子・二ノ瀬しずくは、成年向け漫画を描いて生計を立てているワケありな女子高生。毎日を生き抜くため仕事に打ち込むしずくだったが、<ある問題>に直面してしまい…。
引用:https://comiccune.jp/series/watanugi//2023年8月11日閲覧
主な登場人物
□二ノ瀬 しずく(にのせ しずく)
❝打ち切られたら…餓死する…❞
(引用/九朗.『わたしのために脱ぎなさい!』第1巻.KADOKAWA.2018年.6頁)
本作品の主人公。高校1年生にして天涯孤独の身になってしまい生活費を稼ぐために未成年でありながら成年向け漫画を描くことになります。作画資料を収集しようにも自身は幼児体型のため参考にできず、ワンクリック詐欺などの経験からインターネットでの資料収集も億劫になっており、物語開始時点で深刻な資料不足から自身の漫画のマンネリ化に悩まされています。
そんな折、校内で高校生離れしたプロポーションを持つ白川心菜(しろかわ ここな)と出会うことで彼女を漫画の資料にすることを決意します。以降、純愛小説のモデルと偽り彼女を成年向け漫画の作画資料とするべく関わりを持つことになります。
人見知りであるほか、父親が友人に裏切られ借金の肩代わりにマグロ漁船に乗せられ失踪した過去や、未成年でありながら生活費のため成年向け漫画を描いている自身の境遇から人間不信に陥っており、前述の心菜も当初は友人としてではなくあくまで作画資料として付き合おうと意識しています。
未成年でありながら成年向け漫画を描く理由は、幼少期に漫画家を志した際に父親から誤って渡された成年向け雑誌を作画資料としてきたことで自然と絵が艶美になってしまったからであり、本心では作中に登場する女子児童向け作品「魔法少女プイクア」のような「人を絵で笑顔」に出来るような漫画を描きたかった模様。その葛藤と自身が未成年であることから、自身が成年向け漫画を描いていることは周囲には秘密にしています。
□白川 心菜(しらかわ ここな)
❝モデルだって本当ははずかしかったけどしずくちゃんのためにって 頑張れたんだよ❞
(引用/九朗.『わたしのために脱ぎなさい!』第1巻.KADOKAWA.2018年.38頁)
しずくのクラスメイトの少女。高校生離れしたプロポーションを持ち、不純異性交遊に励んでいるとの噂から周囲からは「学校一のビッチ」と評されています。
しかし、真実は純粋で天真爛漫な兄想いの普通の少女であり、前述した噂の真相も兄と一緒にいた彼女をクラスメイトが援助交際していると勘違いしただけであり、性知識は皆無でしずくの執筆した漫画を読んだ際は未知の恐怖から泣き出してしまうほど。
前述した噂から友人は少ないですが、本人に噂の自覚はなく、友人が出来ないのは自身が子どもっぽいからと勘違いしています。そのため、作画資料にするために近づいたとはいえ自身に積極的に関わろうとするしずくを友人として大切に思っています。
先に述べたように本人は純粋な少女なのですが、その性知識の乏しさから校内で俗にいう「電マ」を白昼堂々と使用するほか、しずくから作画資料のために提供された下着を見せびらかすなど自覚のない行動が目立ち噂の信憑性が増してしまうこともあります。
□三宅 花梨(みやけ かりん)
❝花梨も師匠みたいなビッチになりたいっス!!❞
(引用/九朗.『わたしのために脱ぎなさい!』第1巻.KADOKAWA.2018年.55頁)
しずくのクラスメイトの少女。ギャルのような風貌で、校内にて「実践経験豊富で100人とやった両刀使い」と自慢していることからしずくの次なる作画資料として標的にされます。
しかし、真相は心菜と同じく性経験のない普通の少女であり従順な性格。しずくと同じく「魔法少女プイクア」の熱狂的なファンでしたが、歳を重ねるにつれて周囲と話題が合わなくなり、コンプレックスである低身長も相まって「大人」になることへ強い憧れを持つようになり、やがて「ヤリ●ンビッチ」になることを決意するなど、その憧れは間違った方向へ向かうことになります。
校内で偶然拾ったしずくの漫画用のネームノートを見たことをきっかけにしずくのことを経験豊富なビッチであると勘違いし師匠と呼び慕うことになります。
「ビッチ」になることを目標としていますが、無自覚さゆえに平然と校内で痴態を晒す心菜を目の当たりにして自身との格の違いを感じて内心恐れると同時にライバル視しています。
後に紹介する風紀委員である岩倉琴音(いわくら ことね)とは幼馴染ですが、その不純な目標から彼女には度々注意され、彼女とは犬猿の仲です。
□岩倉 琴音(いわくら ことね)
❝そう私もあなたと同じ♪どうしようもなくオ●二ーが大好きなのッッ!!!❞
(引用/九朗.『わたしのために脱ぎなさい!』第1巻.KADOKAWA.2018年.76頁)
しずくのクラスの学級委員兼風紀委員。幼少期から曲がったことを嫌い約2秒の遅刻すら許さない徹底した正義主義です。真面目で成績優秀ですが運動神経は良くない様子。
そんな彼女ですが、その実態は「オナニスト」を自称するオ●二―中毒者です。小学5年生の掃除の時間に偶然机の角に性器が擦れた際の快感から以降自慰行為に魅了され、高校生となった現在も人前で優等生を演じる裏で一人快楽を貪る自身に興奮するなど、正真正銘の変態です。
しずくが持つ編集部から送られてきた作画資料用の性玩具を偶然目撃したことで彼女も自身と同じオナニストであると勘違いして以降、性玩具の貸し出しを条件に彼女の遅刻を見逃す契約を結びます。
思い込みの激しい性格で時折、荒唐無稽ともいえるオナニスト論を展開しますがその壮大な世界観はシュールな笑いを誘う本作品の見どころの一つでもあります。
□茶山 葉月(さやま はづき)
❝フッ…滑稽でしょ?23にもなって「現役JKレイヤー」なんて…❞
(引用/九朗.『わたしのために脱ぎなさい!』第1巻.KADOKAWA.2018年.92頁)
しずくたちの通う高校に就任したばかりの新米古典教師。授業は不慣れなものの歳の近さから生徒たちからの人気が高いです。
しかし、その裏の顔は「カリスマ現役JKコスプレイヤーHADUKI」であり周囲には秘密にしながら活動を続けています。成人しているにもかかわらず「現役JK」を名乗っているのは、高校3年でコスプレデビューをした後、大学生となってからも歳の差が小さいことから現役JKを名乗り続けていった結果後戻りが出来なくなったため。
しずくが漫画の作画資料にすべくSNSにアップロードされていた自身のコスプレ写真を保存していたことを偶然知ってしまい、動揺から自ら前述の正体を明かしてしまいます。以降は吹っ切れたのかしずくをコスプレさせて写真撮影を楽しんでいる様子も見られます。
後に、未成年であるしずくの編集部の担当との打ち合わせに代理として参加しますが、担当との奇跡的な会話の噛み合いからしずくが成年向け漫画を執筆していることには気づいていません。
□一条寺 まゆ(いちじょうじ まゆ)
❝二ノ瀬たちの絆を肌で感じたことでなにかが掴めたきがする❞
(引用/九朗.『わたしのために脱ぎなさい!』第1巻.KADOKAWA.2018年.118頁)
しずくのクラスメイトの少女。しずくと同様に幼児体型で、ロリメインのアンソロジーに参加することになったしずくの作画資料の標的になります。
漫画研究部に所属しており主に百合漫画を描いています。彼女の執筆する漫画の登場人物はしずくと心菜がモデルになっており、インスピレーションを得るために、自身がしずくの執筆する漫画のモデルになることを条件に、彼女たちが脱衣した状態でモデルになることを依頼します。
しかし、自身以外の前で心菜が肌を晒すことを嫌ったしずくによって、漫画研究部の部室にて「お題に沿った絵を描き合い、部員達の採点によって負けたほうが服を一枚脱ぐ」という方式で勝負することになります。漫画に懸ける情熱は高く、下着を脱いででも勝負を続行するほど。
しずくと心菜の関係、通称「ニノシラ(二ノ瀬×白川)」を神聖視しており、彼女たちが他の女性と関わり合うことに拒否感を示します。
しずくは当初、彼女の描く漫画を成年向けだと勘違いしていましたが実際は全年齢向けであり自身とは一線を引いています。また、彼女もしずくが漫画家であることを知っていますが、その内容は一般向けのお色気漫画だと勘違いしています。
こんな方にオススメ
□青年誌の限界を攻めた性的表現(百合)に興味のある方
□綿密に練られた物語より登場人物のビジュアルなどに魅力を見出す方
【キーワード】「日常」「下ネタ」「百合」「コメディ」「フェティシズム」
本作品の魅力は何といってもその過激な性的表現によるコメディ要素が魅力です。作中では「セック●」や「オ●ニー」といった直接的な単語だけでは飽き足らず、「処女ビッチ」や「姉妹丼」などの俗語までもが飛び交います。そしてそういった描写を氏によって描かれた艶美で肉感的な登場人物達が彩ることにより、青年誌の限界を攻めた挑戦的な作品に仕上がっています。しかし、作風はあくまでコメディ寄りでありそういった表現も生々し過ぎることなく笑いに昇華されており気軽に読むことが出来ます。
主人公が作中で描く成年向け漫画のシチュエーションのマンネリ化を阻止するという展開から、作中では様々な個性を持つキャラクターが多数登場することで読者の幅広い性的趣向に対応していることも特徴です。
また本作品に登場する人物の殆どが女性となっており、これまで紹介してきた『まんがタイムきらら』(芳文社)の作品の読者でも取っ付きやすい作風になっています。
既刊6巻(2023年8月12日現在)という揃えやすさを含めて是非読んでいただきたい作品です。
感想(ネタバレ含む)
□バラエティー豊かな登場人物達による怒涛のお色気展開
本作品の魅力は何といってもそのお色気要素にありますが、その登場人物の多さからマンネリ化を全く感じさせません。本作品の登場人物の個性の豊かさなら本作品を手に取った読者の性的趣向に合致するキャラクターがきっと一人は見つかる事でしょう。各登場人物の見せ場も比較的均等に用意されており、個性の豊かさも活かされています。
物語の展開は基本的に一話完結で非常にテンポがよく、気軽に読み進めることが出来る中で随所に繰り出される下ネタの描写が笑いを誘うコメディ作品として非常に質の高い仕上がりになっています。
また、物語の進行によって徐々に変化していくしずくの心菜への想いも見所であり、性行為といっても差し支えない描写もされることからコメディ作品としてだけではなく、百合作品としての要素も兼ね備えています。
物語のテンポの良さと魅力的なキャラクターが多数登場することからTVアニメ化に適した作品だと感じており、2023年8月12日現在でも連載を続けていることから私は密かにTVアニメ化を期待しています。
印象的な場面・台詞
❝全世界のオ〇ニー界の頂点に君臨する自●20アメリカ合衆国代表!❞
(引用/九朗.『わたしのために脱ぎなさい!』第5巻.KADOKAWA.2022年.68頁)
自●20(世界オナニスト首脳会議)という、実在する国際会議G20(Group of Twenty)に掛けたネタです。幼馴染の花梨から妄想癖があると指摘されていた事からこれまでのオナニスト論も彼女の妄想の産物であったと思いきや実際にその人物が登場することで、彼女のオナニスト論は本作品の世界に確かに存在する概念であることが示唆されてしまったほか、その壮大過ぎるスケールから思わず爆笑してしまいました。
小ネタ・余談
※2024年5月3日追記
□豪華声優陣による期間限定ボイスドラマ化
2022年12月27日に発売された本作品の第6巻の帯には、期間限定で聴くことのできるボイスドラマが収録された二次元コードが記載されていました。
ボイスドラマは九朗氏の書き下ろしで、CVは二ノ瀬しずく役を藤田茜氏、白川心菜役をM・A・O氏、三宅花梨役を小原好美氏、岩倉琴音役を渕上舞氏、一条寺まゆ役を長縄まりあ氏が演じています。
現在、本編の視聴期限は過ぎていますが、コミックキューン公式X(旧Twitter)では各キャラクターのボイスサンプルが2024年5月3日現在でも公開されています。
❝後にこのオ●ニーいかに壮絶であったかを生徒会会計(当時)園部美緒氏は振り返る❞
(引用/九朗.『わたしのために脱ぎなさい!』第3巻.KADOKAWA.2020年.56頁)
言わずと知れた、刃〇(バ〇)シリーズのパロディですね。全体的に琴音の登場するエピソードは描写、表現共に何処か開き直ったような印象を受け、前述のお気に入りの場面でも挙げたように何かと印象に残るキャラクターです。
無料で読める公式サイト
最後に
今回の作品紹介はいかがだったでしょうか。
今回は『コミックキューン』から作品を紹介しましたが本作品の作風は『まんがタイムきらら』と似ているため、記事も比較的書きやすかったです。私はほかにも『コミック百合姫』(一迅社)の作品も好んで読むので、こちらの作品もいずれ紹介したいなと考えています。
長くなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。
コメント