初めに
物語を書いたきっかけ
この記事でも触れたように私は、ブルーアーカイブの守月スズミがお気に入りです。
ハスミ、ユウカ、チナツと並ぶ、初期プレイアブルキャラの一人なのに影が薄いことが玉に傷ですが、そんなところも好きです。
それにしても出番が少ない……。5th PVに影すら映らなかった(レイサはいた)ことに涙したことがまだ記憶に新しいですが、直近の新イベント「Serenade Promenade」にて数多くのトリニティ生徒の新衣装が披露される中、我らがトリニティ自警団はというと……
「名前すら出なかった」(シミコもいなかった……)
どうして……怒りを通り越してもはや期待感が高まります。「ここまで引っ張るんだから株爆上がりイベントが用意されているに違いない」と。ここまで来て今更、イベント警備みたいなしょっぱい仕事ではなくトリニティの存亡をかけて戦ってほしい……。
しかし、悲しきかな。注目を浴びた今回のトリニティの文化祭イベントですが、晄輪大祭のように後半がないことはほぼ決定。おまけにグッズ展開ではマリーたちの新衣装のアクリルスタンドに交じってしれっと自警団の2人が追加されており、しばらく新衣装の実装は無い事を暗に示されてしまいました。
もう待てない……。あまりの供給の少なさに日増しに膨らんでいく妄想を抑えきれなくなり、一度ここで考えを整理しようと思ったのが今回の記事を書いたきっかけです。
保険を掛けるようでみっともないですが、こういった物語を自分で書くのは今回が初めてです。文章も構成力も非常に拙いですが、同じ自警団のファンの方と考えを共有したいと思い投稿しました。
解釈違いと言われることも覚悟の上です。むしろこの物語をたたき台に皆さんの理想の自警団像を膨らませていっていただけたら幸いです。
ストーリーについて
彼女たちを活躍させるにあたって持ち味である「政治的なしがらみがなく武力介入できる組織」「自主的に治安維持に努める正義感の強さ」などに注目するなら、トリニティの政治絡みのシリアスなイベントになることは決まっていました。しかし、ドンパチ騒ぎの規模ではメインストーリーの「エデン条約編」を決して超えることはできないと思い、こじんまりとした「知られざる戦い」的な方向で進めました。組織の雰囲気的にもこっちの方が合っているような気がします。
結果「敵は七囚人率いる各組織から引き抜かれた生徒が構成する革命組織➡外からでは判別できず正実が迂闊に手を出すと派閥問題に関わる➡政治に関係ない自警団に倒してもらうしかない!でも面子の問題あるからちゃんと裁かれてね➡覚悟決めた自警団の大勝利。しかし、最後は法廷へ…➡正義の心があるところに我らあり。自警団復活‼(完)」という流れになりました。
ヴィランには七囚人を選びましたが、エデン条約編の後だと小悪党程度では物語にするまでもなく取っ捕まりそうなので、それ相応の格を持つ七囚人が適任と思ったからです。(エデン条約編が凄すぎる…。)
また、このストーリーではナギサにも重要な役を担ってもらいました。個人的に好きなキャラクターというのもあるのですが、出番が多い代わりに損な役回りも多い彼女にこのあたりで一度、現当主としての威厳みたいなものをしっかり示してほしいという思いもあり彼女を抜擢しました。分かる人にはわかると思いますが、このあたりの展開は『新機動戦記ガンダムW』の最終話を意識しています。この記事を書いていた時、ちょうどアマプラで配信が開始されたのでセリフを読み返すことができて助かりました。
話の流れでハスミには嫌な役目を押し付けてしまいましたが、あくまで主役は自警団なので嫌な思いをされた彼女のファンの方は、各自脳内で他のキャラに変換させながら読んでいただけると幸いです。でも、プロローグしかり、ブルアカフェスの書下ろしイラストしかり、何かとスズミと絡みのあるキャラなので適任だとも思っています。
因みに「先生」の出番は殆どありません……。難しい……。トリニティの政治はややこしいし、自警団は最初から覚悟ガンギマリだし……で、結果的に殆ど活躍させることはできませんでした。物語的にいてもいなくても変わらないレベルです。先生ファンの方はすいません。
本編
プロローグ
(回想)あの日の夜はとても長く感じられました……。
(回想)これは歴史には記録されない”私たち”(トリニティ自警団)の真実の闘いです。
計画は首尾よく進んでいるか?…………そうか。もうじきトリニティは「生まれ変わる」
アリウスの連中のように大掛かりなことをしなくともこの学園は容易く落ちる。そのことを今回の作戦で証明する……‼
01 再び揺れるトリニティ
~トリニティの会議室~
本日、先生に来ていただいたのは他でもありません。数日前に発表された例の「犯行声明」の件についてです。
まずはこちらをご覧ください。
手渡された写真を見る。
“これはひどい……。”
“こんなことを一体だれが?”
今回爆破された場所は、トリニティの中でも警備体制の厳重な場所。一般の生徒が立ち入ることは難しく、ましてや爆発物の設置など……。
信じがたい事ですが、内通者がいることは間違いありません。早朝だったこともあり幸い怪我人は出ませんでしたが、これはその気になればより多くの被害を出せるというメッセージだと受け取っています。
そしてこれが、事件開始から数時間後に発表された犯行声明です。
犯行声明の映像を見る。
首謀者の名前は「七瀬ナナミ」、悪名高い七囚人の内の一人で、元はトリニティの生徒でもありました。そんな彼女ですが、トリニティに居た頃は正義実現委員会に所属していたこともあり、優秀な生徒だと評判でした。
ですが、政治的しがらみや派閥間の争いに関わることに嫌気が差した彼女は、正義実現委員会を去り、部活に所属することもないまま自治区での治安維持活動を行うようになります。今でいう「トリニティ自警団」の走りのようなものです。
それからです。彼女は生まれ持ったカリスマ性と無所属であるフットワークの軽さを利用し、秘密裏に当時の政権への不満を抱いていた各組織の幹部とコネクションを築き上げ、最終的に僅か数十名で当時のティーパーティーの党首たちを人質に立てこもり事件を引き起こすことになります。
規模が規模だっただけに大事には至らず、すぐに身柄を拘束されることになったのですが、彼女の計画性と類まれなカリスマ性を恐れた当時の上層部は、新たな信者の出現を未然に防ぐべくその身柄を矯正局に分け渡すことを決定しました。
犯行に及んだ他の生徒も重い処罰を受け、徹底された情報統制により事件自体もいずれ人々の記憶から忘れ去られていくと思っていたのですが。彼女の意思は今も尚この学園に存在しているようです……。
我々も失念していました。彼女が矯正局から脱走したという情報を得た時点でこうなることは予想できていたはずなのに……。彼女は、我々がエデン条約の一件での事後処理に追われている間に着々と計画を進めていたようです。
「ティーパーティー並びにすべての派閥の解散と新政権の樹立」これがナナミたちの要求です。自分たちの主導の元、全ての生徒たちの意思を統合すると……。
「ある協力者」、ナナミのこの一言が原因で各組織は騒然。皆、犯人探しに躍起になっています。エデン条約での爪痕が残る中、ようやく再興への道を歩みだしたというのに、我々はまた「誰かを疑わないといけない」のでしょうか……。
それだけではなく、彼女たちは引き入れた組織の部員から得た情報をもとにSNSなどで対立や不安を煽るデマを流しているようです。
そしてどうやらこれが、今まで派閥意識をあまり持ってこなかった生徒たちにヒットしてしまっているようで……。これまでの醜い政治争いに嫌悪感を抱いていた生徒たちの中には彼女の主張に賛同する者も現れ始めました。
広場では現政権に対するデモ活動も見られるようになっています。暴走する生徒たちの歯止めが利かなくなりつつあります。早急にナナミたちの行為を止めなくてはなりません!
調査の結果、彼女たちは自治区にある複数の拠点で活動を行っていることが判明しています。しかし、構成員には正義実現委員会やシスターフッドといった既存の組織の部員も含まれていて、外からでは判別できない上に直接活動を行っていない”ダミー”の拠点もあるようです……。
彼女の正確な潜伏場所が判明していない以上、しらみつぶしに拠点を攻撃するしかありませんが、もし早まってダミーの拠点を攻撃すれば、それこそ彼女たちの思う壺です。世論は傾き事態は取り返しのつかないことになるでしょう。
この状況で我々が動こうが、動かなかろうが、各派閥、組織間で互いを憎しみ合う感情は収まりません。すべてを憎みひとしきり争い合ったところで生徒たちは望むのでしょう「新政権の樹立」を……。
約束の時間は5日後の明朝、もう時間がありません!!我々には必要なのです。彼女たちを討てる大義名分が!
………………。
……一つだけあります。政治的、公的なしがらみのない、それでいて武力介入ができるだけの力を持った組織が。
“トリニティ自警団か……。”
02 守りたいもの
つまり、あなた方にナナミたちの潜伏場所への奇襲をお願いしたいのです。
それなら任せてください!!この自警団のスーパース……。
待ってください!この作戦には続きがあります。それは……。
……?
それは、最終的に正義実現委員会が彼女たちを制圧したあなた方の身柄を自治区内での暴動行為の容疑で拘束するというものです……。
拘束⁉ど……どうしてですか⁉私たちは、学園の平和のために戦うのではないのですか?
……そういうことですか。
スズミさん?
トリニティ全体を巻き込んだこの騒動で正義実現委員会が動けなかった事実は不信感を呼び、新たな政治的抗争の火種になる。
皆さんの敵意が複数に分散してしまっているこの状況で、分かり易い「悪役」として周囲のヘイトを一身に集めた後、大衆の面前で「正義」の名のもとに裁きを受ける存在が必要だと……。
それが……私たち「トリニティ自警団」だというんですか……?そんな……。
申し訳ありません……無茶なことを言っているのは承知の上で頼んでいます……!ですが、あなたたちをおいて他にいないのです!この状況を打開できる存在が!
……少し考える時間をいただけませんか?一日、いえ、半日で構いません。それまでに答えを出しますから。
もちろんです。
ありがとうございます。……先生。久しぶりに「エスコート」させていただけませんか?
~トリニティ・商店街~
ここは、「カフェ・ミルフィーユ」以前レイサさんに教えていただいた場所で、最近はパトロール終わりに立ち寄る機会も増えました。それまではあまり関心がなかったのですが、今では毎月の新作スイーツの発表を楽しみにしています。
~遊園地~
ここには以前、先生と訪れたこともありましたね。ここの観覧車から見える星空は今でも変わっていません。昔も今も私にとっては特別な場所です。
それからスズミにエスコートしてもらいながら、トリニティのいろんな場所を見て回った。
………………。
“スズミ……?”
“どうかしたの?”
改めて実感しました。私はやはりこの学園が好きです。とても完璧だとは言えません。醜い部分も少なからずあります……。それでも、だとしても、この学園も、そこで出会った方々も、私にとってはかけがえのない存在です。
だからこそ、あんなやり方を認めるわけにはいきません‼
……初めから答えは出ていたのかもしれません。先生、私はあの任務を引き受けようと思います。私の大切なものを守るために、自分の信じる正義のために。
“本当に大丈夫?”
“この作戦が終わればスズミたちは……。”
お気遣いいただきありがとうございます。ですが、心配しないでください。私たちはただ犠牲になりに行くのではありません。これは守るための戦いなのです。もう何も怖くはありません。私は、私にできることをするだけです。
“そうか……なら私も。”
“自分にできることを精一杯やり遂げてみせるよ。”
03 平和を願う者たち
~トリニティのとある廃墟~
以上が作戦の内容になります。
これまで”グレー”な存在であった私たちはこの任務をもって完全な”黒”になります。もう後戻りはできません。手を引くなら今しかありません。心配せずとも脱退したことを責める者などここにはいません。
これまで自警団としてあまり言葉を交わしたことのない皆さんに急にこんな事を頼むこと自体、無茶な話であることも承知しています。しかし、今は一人でも多くの力が必要です‼どうか皆さんの力を貸していただけないでしょうか?
ど……どうしよう。
そこまでの事なんて私には……。
「私はやりますよ!!!!!!!!!」
私は……私はやります!!!! 大好きなこの学園を、みんなを守りたいです!!この宇沢レイサ、今回の任務、どんなことがあっても必ずやり遂げてみせます!!
……わ……私もやります!やらせてください!!
スズミさんだけにいい恰好はさせませんよ!
皆さん……感謝します!!
~正義実現委員会部室~
ハスミ先輩。例の作戦の件、トリニティ自警団からの承諾を得ました。かなりの数の団員が賛同してくださったようです。
彼女たちに感謝しなくてはなりません。後は、ナナミの正確な居場所さえ掴めれば……。
“それなら私に任せてほしい。”
“「彼女」ならきっとこの問題を解決してくれるはず。”
~数日後~
(通信)遅くなって済まない。例の件だが、奴の潜伏場所がある程度絞り込めた。どうやら奴の支持派の中に金銭欲しさにブラックマーケットに情報を流した奴がいたようだ。
(通信)愚かなものだな……。それだけ奴らも一枚岩というわけではないということだ。
(通信)……すまない先生。トリニティの各勢力が絡む以上、私にできることはここまでだ。それと先生……。
“どうかしたの?サオリ?”
(通信)一度はトリニティを転覆させようとした私がこんなことを言うのも可笑しな話だが……。どうか、トリニティを救ってやってほしい……。あの場所は、あいつの……アズサの大切な居場所だからな……。
“ありがとうサオリ。必ず守ってみせるよ。”
“後はこちらに任せてほしい。”
~作戦当日~
再確認ですが、この作戦を知っている者は極少数です。無論、余計な誤解を生まないために先生もこちら側で指示を出していただきます。
作戦が開始すれば私たちから皆さんにできることは殆どありません。せめてもの助けになればとこちらで装備を用意しました。ここにあるものは好きに使っていただいて構いません。
す……凄い数の装備です……それにどれも最新式の!
感謝します。
感謝しなくてはならないのはこちらの方です。申し訳ありません……あなたたちだけにこんな重い役目を背負わせてしまって……。
顔を上げてくださいハスミさん。私たちなら大丈夫です。自分たちで決めたことですから。それに……。
「誰かがやらないといけない」ことですから。
“スズミ、そしてみんなも必ず無事に帰ってきてね。”
“どんなことがあっても私はみんなの見方だから。”
ありがとうございます。その言葉が聞けただけで十分です。
……それでは、トリニティ自警団、任務を開始します!
04 それでも前に
~トリニティ自治区~
ドアを開けろ!トリニティ自警団だ!!
トリニティ自警団⁉話が違うじゃない! 誰も私たちには手出しできない筈じゃ⁉
(通信)現在、自治区の各地にてトリニティ自警団と思われる組織の暴動が発生。各部員は暴動の鎮圧にあたってください。
いよいよ始まりましたね……。
(私もそろそろ覚悟を決めないといけませんね。上から見ているだけではいけません。私も戦わなくては……!)サクラコさん、ミネさん少しお時間いただけますでしょうか?
~トリニティ・スクエア~
どうしましょう⁉なんだか大変なことになってきましたよ!
どうしてなの……?自警団の人たちってちょっぴり頑固だけど、根はやさしい人たちだったのに……。
どうする?このまま放っておくわけにもいかないし、私たちも正義実現委員会に加勢するか?
(この状況はおそらく……)アズサちゃん、ここは大人しくしていた方が良さそうです。「彼女たちの覚悟」を無駄にしないためにも。
……?
~トリニティのとある廃墟~
トリニティ自警団が各拠点に攻撃を仕掛けているようです。それもダミーの拠点も含めて片っ端から。正気とは思えません……。どうなされますかナナミ様?
構わない計画は続けろ。所詮寄せ集めの集団、長くは持つまい。それにしてもあの装備……そうか……正義実現委員会の差し金か。いかにもあいつらの考えそうなことだ。
~トリニティ自警団作戦本部~
スズミさん。ポイントCの制圧に当たっているレイサさんから報告です。
変わってください。
(通信)スズミさん!ポイントCの制圧が完了しました!! ですが……
(通信)………………。
レイサさん?
ですが、こちらはどうやらダミーだったようです。任務とはいえ無実の生徒を手にかけてしまいました……。すいません、こんな気持ち初めてで……。
これではもう「自警団のスーパースター」は名乗れませんね……杏山カズサに合わせる顔がありません。
レイサさん……。
スズミさん。私たちのことは構わず任務を遂行してください!!この任務が成功すればトリニティ自警団は胸を張って学園に帰れます!
気持ちが落ち着いたら、私も次のポイントへ向かいます。私なら大丈夫です……!まだ戦えます!!
それでは失礼します。スズミさん、どうかご武運を……!!
他のメンバーからも続々と報告が上がってきています。これらと先生からの情報を照合すると彼女の居場所はおそらく……
……行きましょう。皆さんの覚悟、決して無駄にしたりはしません‼
~トリニティのとある廃墟~
ここだけ警備が手厚い……!彼女がここにいることは間違いなさそうですね。
いたぞ!トリニティ自警団だ!! これ以上お前たちの勝手にさせるか!
スズミさん!もう時間がありません!ここは私たちに任せて先に行ってください‼スズミさんはナナミを‼
すみません!ここは任せました‼
正規の訓練も受けていない素人同然のお前たちなど……‼
くっ……‼でも、負ける訳にはいかない……絶対にスズミさんの元には行かせない‼
なんなんだ……この気迫……いったい何がこうまでしてこいつらを突き動かす?
~廃墟の最深部~
こんなところにいたのですね。七瀬ナナミ……‼
貴様がトリニティ自警団の……名前は確か守月スズミだったか。
随分と派手にやってくれたな。しかし、貴様はこんなことをして自分たちがどうなるか分かっているのか?たとえ私たちを倒しても正義実現委員会が”貴様たち”(トリニティ自警団)をタダで返すとでも?
分かっています。分かった上で私たちは戦っているのです。
なおのこと理解できないな。自分たちが使い捨ての駒だと知りながらなぜ戦う?なぜそうまでして今のトリニティにこだわる?
スズミ、貴様は私たちを単なるテロリストだと思っていないか?
違うとでもいうのですか?
そうとも。私たちは何も全てを壊そうと言っているのではない。この学園を導いてやると言っているのだ。お前もエデン条約調印式、そして今回の一件でのトリニティの醜態をその目で見たはずだろう?下らない”派閥意識”や”組織間のしがらみ”によって、多くの者が為すべきことを為せず、無益な争いを続け、事態を悪化させる……。
広場のデモ隊を見てみろ。愚かな連中だ……。情報を精査せず、大した意見や主張も持たないまま、目論見通り我々が与えた”仮想敵”に怒りをぶつけている。奴らは矛先を向ける相手すら満足に選べないのだ。
スズミ、物事を大局的に見れる人間などほんの一握りだ。派閥がなんだと言っているが、多くの者は自分が何者かも分からないまま、流されて、信じ込んで、騙されて、そうやって誰かにとって都合の良い真実に翻弄され続けるだけだ。下らない政治ごっこの操り人形としてな。
私たちはそんな連中を正しき方向へ導くために行動している。大衆の意思は偉大な指導者の下で統合されるべきだ。あの学園にいる意味なら私たちが与えてやる。もう見えない何かと戦う必要も、己の立ち位置で戸惑うこともない。そんな学園を創ってやると言っているのだ!
分かり合えないから壊すというのですか?皆、それぞれの立場、それぞれの信じた道があります。それで良いではありませんか。自分たちの為すべきことは自分たちで決めます!必要なのは指導者ではなく「互いの意思を認め尊重する心」のはずです……‼
確かに今の私たちにはそれが欠けていたのかもしれません。ですが、それが分かった今だからこそ、私たちは変われるはず……変わろうとしています‼その歩みをあなたのエゴで止めるわけにはいきません!私はそのためにここにいます‼
なら、それはいつ変わるのだ?「その日」が来るまでにいったいどれだけ苦しめばいい?皆、貴様のように強くはない。新政権の樹立、この学園を変えるために「誰かがやらないといけない」ことなのだ……。
正義というものは、一つの小さなことから正すのもの。あなたはどうしてそう急ぐのですか……‼。
……まぁいい。私は貴様とこれ以上、ここで不毛な議論を重ねるつもりはない。お前も初めから話し合いで解決できるとは思っていないのだろう?決着をつけよう。勝ったものが正義だ……‼
負けるわけにはいきません…………‼
05 誰がために戦う
チッ……やるな……‼トリニティにまだこんな奴がいたとはな……!
(くっ……強い……!このままでは……。)
(通信)スズミさん‼
レイサさん⁉
(通信)ティーパーティーから放送です!とにかく聞いてください‼
(放送)我々ティーパーティーは、一連の騒動に対してシスターフッド、救護騎士団との一致を得た決議をここに発表します。我々はナナミ一派に要求の撤回を求め、各分派、組織との共存を改めてここに宣言します。
(放送)第一回公会議によって一度は一つになった我々ですが、実態として分派、組織間でのわだかまりは依然として残ったまま、水面下での政治抗争は続き、互いが持つその不信感は、先のエデン条約調印式、そして今回の騒動で内紛という最悪の形で現れました。
(放送)多くの血が流れ、互いの心に深い傷跡が残りました。我々は一度のみならず二度もこのような失態を許してしまったのです。三度目など決してあってはなりません。我々は今一度、互いの認識について考えを改めなくてはなりません。
(放送)いがみ合い、疑い合い、憎しみ合う政治はもう終わりにしましょう。この学園が次の段階に進むためには、我々は変わらなくてはなりません。形式上の協力関係ではなく、真の意味で互いを理解し合い手を取りあう必要があるのです。
(放送)どれだけ時間がかかるかはわかりません。しかし、前に進むことをあきらめてはなりません。私たちは信じています。我々は変われるはずだと……。
(放送)最後に我々の態度が不鮮明であったがためにこれまで多くの生徒に苦渋を強いていたことを深く謝罪します。この表明にすべての生徒が同調することを強く希望します。
(ナギサ様たちも「戦って」おられるのですね。)
トリニティは今、自分たちの意思で再興への道を歩みだしました。もはやあなたたちの行動は無意味です。
ここまで織り込み済みだったの言うのか……。
いいえ。私もここまでは予期していませんでした。ですが、安心してください。私たちにも退路がないことに変わりはありませんから。
お互いこれからのトリニティには不要な存在というわけか……いいだろう。
守月スズミ、こうなった以上、この勝負の結果はトリニティには関係あるまい。だが、私もこのままむざむざと投降するつもりはない。スズミ、貴様とは個人的な決着がつけたい……‼
……いいでしょう。最後までお付き合いします。
06 トリニティを照らす朝日
スズミ……戦いの中で分かったことがある。貴様と私は同類だ……‼その愚直なまでの正義感と愛校心はいつか裏切られ、憎しみはやがて学園を脅かす刃に変わる!!
すでに貴様は今回の一件で染めてしまったのだ。黒を加えた白いインクが二度と元の輝きを取り戻せないように、貴様はもう”白”(向こう側)には戻れまい……その事実にいつまで耐えられるかな?
独房から見学させてもらうぞ、貴様と貴様の信じた学園の行く末を……。
……。
そこの2人、銃を捨てて大人しく投降しなさい!!
(時間通りですね。もうじき夜が明ける……ようやく終わりです。)
スズミ……。そこのあなた、彼女に手を貸してあげてください。
しかし、彼女たちは……。
いいですから早く……。
は……はい!分かりました! おい!肩を貸すからこっちへ来い!
お世話をおかけします……。
ハスミさん。私たち……いえ、”貴方たち”の勝利です。
…………。
~数日後~
(回想)あれから程なくしてトリニティを騒がせた大事件は無事に収束。私たちトリニティ自警団は自治区での暴動行為で罪に問われることになりました。事情を知る各組織の幹部の方々の計らいがあってなのか、思っていたより軽い処分で済みました。
(回想)ナナミさんは、矯正局ではなくトリニティで身柄を預かることになったそうです。二度と同じ過ちを繰り返さないように、歴史の闇に葬るのではなく、トリニティの一員として、彼女と向き合っていくためだと皆さんは仰っていました。
(回想)そして、スズミさんは……。
~聴耳会にて~
それでは守月スズミ、最後に何か言い残すことはありますか?
いいえ。何もありません。
(私にできることは全てしました。悔いなどありません。後は、この学園がより良い道を歩んでいくことを願うだけですが、何も心配はありません。この学園なら、彼女たちならきっと……。)ー脳裏に浮かぶ各組織の2年生の面々ー
(貴方たちの意志の強さには敬意を表します。今回の取り調べで誰一人として作戦を理由に罪から逃れようとする者はいませんでした。誰一人……。)
(今回の一件で″彼女たち”(トリニティ自警団)を失った事実は大きい……。我々、正規実現委員会はより一層気を引き締めていかなくてはなりません。)
(必ず守って見せます……‼彼女たちが繋いだこの学園の平和と正義を‼)
(回想)あれから自警団の活動はめっきり減りました。世間からの風当たりも強いままです。ですが、私は信じています。人々に正義を信じる心がある限りトリニティ自警団は必ず復活すると!!
07 正義のため、彼女は今日も走る
~事件収束からしばらくたったある日~
おい!!この店の売り上げを全部出せ! 余計な抵抗をしたらタダじゃすまないぞ!!
それにしても最近は好調だな! ここには正義実現委員会のやつらもいないし。あの事件以来、自警団の連中もすっかり見なくなったしな!!
やれやれ……あなたたちという方は……。
あぁ? なんだテメーは?
閃光弾投擲!!
ぐぁー!! この光は⁉まさか……!”アイツ”はもう……。
まったく懲りない方たちですね。自警団の活動はあの日を最後にと思いましたが、どうやらまだ「誰かがやらないといけないこと」のようですね……。
(回想)スズミ、貴様は私と同類だ……‼
私はあなたとは違うやり方で正義を成します。今の自分にできることを……これからもずっと……。
それでは、パトロールの続きを始めましょう。
トリニティ自警団の一番長い夜 完
最後に
拙い文章でしたが最後まで読んでいただきありがとうございました。ぜひコメント欄などであなたの「自警団像」をお聞かせください。
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