初めに
物語を書いたきっかけ
この記事でも触れたように私は、ブルーアーカイブの守月スズミがお気に入りです。
ハスミ、ユウカ、チナツと並ぶ、初期プレイアブルキャラの一人なのに影が薄いことが玉に傷ですが、そんなところも好きです。
それにしても出番が少ない……。5th PVに影すら映らなかった(レイサはいた)ことに涙したことがまだ記憶に新しいですが、直近の新イベント「Serenade Promenade」にて数多くのトリニティ生徒の新衣装が披露される中、我らがトリニティ自警団はというと……
「名前すら出なかった」(シミコもいなかった……)
どうして……怒りを通り越してもはや期待感が高まります。「ここまで引っ張るんだから株爆上がりイベントが用意されているに違いない」と。ここまで来て今更、イベント警備みたいなしょっぱい仕事ではなくトリニティの存亡をかけて戦ってほしい……。
しかし、悲しきかな。注目を浴びた今回のトリニティの文化祭イベントですが、晄輪大祭のように後半がないことはほぼ決定。おまけにグッズ展開ではマリーたちの新衣装のアクリルスタンドに交じってしれっと自警団の2人が追加されており、しばらく新衣装の実装は無い事を暗に示されてしまいました。
もう待てない……。あまりの供給の少なさに日増しに膨らんでいく妄想を抑えきれなくなり、一度ここで考えを整理しようと思ったのが今回の記事を書いたきっかけです。
保険を掛けるようでみっともないですが、こういった物語を自分で書くのは今回が初めてです。文章も構成力も非常に拙いですが、同じ自警団のファンの方と考えを共有したいと思い投稿しました。
解釈違いと言われることも覚悟の上です。むしろこの物語をたたき台に皆さんの理想の自警団像を膨らませていっていただけたら幸いです。
ストーリーについて
彼女たちを活躍させるにあたって持ち味である「政治的なしがらみがなく武力介入できる組織」「自主的に治安維持に努める正義感の強さ」などに注目するなら、トリニティの政治絡みのシリアスなイベントになることは決まっていました。しかし、ドンパチ騒ぎの規模ではメインストーリーの「エデン条約編」を決して超えることはできないと思い、こじんまりとした「知られざる戦い」的な方向で進めました。組織の雰囲気的にもこっちの方が合っているような気がします。
結果「敵は七囚人率いる各組織から引き抜かれた生徒が構成する革命組織➡外からでは判別できず正実が迂闊に手を出すと派閥問題に関わる➡政治に関係ない自警団に倒してもらうしかない!でも面子の問題あるからちゃんと裁かれてね➡覚悟決めた自警団の大勝利。しかし、最後は法廷へ…➡正義の心があるところに我らあり。自警団復活‼(完)」という流れになりました。
ファンの間では元アリウス設定も一定の支持を得ているスズミですが、無いに等しいアリウス要素から過去の背景まで想像できるほど私はイマジネーション豊かではないので、今回は現状公開されている情報だけを素直に受け取って物語を書きました。そのためスズミがこれといったバックボーンがないにも関わらず有り得ない程に正義感が強いキャラクターになってしまうことに(現状だと、ゲーム内でも本当にそういう扱い……)
ヴィランには七囚人を抜擢しましたが、エデン条約編の後だと小悪党程度では物語にするまでもなく取っ捕まりそうなので、それ相応の格を持つ七囚人が適任と思ったからです。(エデン条約編が凄すぎる……)
また、このストーリーではナギサにも重要な役を担ってもらいました。個人的に好きなキャラクターというのもあるのですが、出番が多い代わりに損な役回りも多い彼女にこのあたりで一度、現当主としての威厳みたいなものをしっかり示してほしいという思いもあり彼女を抜擢しました。台詞などは個人的に好きな作品だった『新機動戦記ガンダムW』の最終話を意識しています。この記事を書いていた時、丁度アマプラで配信が開始されたのでセリフを読み返すことができて助かりました。
話の流れでハスミには嫌な役目を押し付けてしまいましたが、あくまで主役は自警団なので嫌な思いをされた彼女のファンの方は、各自脳内で他のキャラに変換させながら読んでいただけると幸いです。しかし、プロローグしかり、ブルアカフェスの書下ろしイラストしかり、何かとスズミと絡みのあるキャラなので適任だとも思っています。
因みに「先生」の出番は殆どありません……。難しい……。トリニティの政治はややこしいし、自警団は最初から覚悟ガンギマリだし……で、結果的に殆ど活躍させることはできませんでした。物語的にいてもいなくても変わらないレベルです。先生ファンの方はすいません。
ゲーム内では他の生徒と関わる描写も少ないので、せっかくなので後日談などにも期待したいです。作戦終了後に治療室で事情を知らないセリナに問い詰められて苦い顔したり、謹慎仲間のミカと草むしりする姿なんかも見てみたいです。
本編
※pixivでも同様のものを掲載しています。
#ブルーアーカイブ #トリニティ自警団 トリニティ自警団の一番長い夜 – MacKeyの小説 – pixiv
プロローグ

あの日の夜はとても長く感じられました……。

これは歴史には記録されない”私たち(トリニティ自警団)”の真実の戦いです。

例の件だが、手筈通り進んでいるか?………………分かっている、そのことには感謝しているさ、”借り”は必ず返す………………あぁそうだ、もうじきトリニティは「生まれ変わる」いや、変わらなければならない。

これ以上、ゲヘナとの小競合いや下らない政治ごっこの駆け引きに生徒の意思を弄ばせたりはしない。あの学園はこの私が導いて見せる。

そこでゆっくりと見ているといい、アリウスの連中のように大掛かりなことをしなくともこの学園は容易く落ちる。そのことを今回の作戦で証明する……!。
01 再び揺れるトリニティ
~トリニティの会議室~

本日、先生に来ていただいたのは他でもありません。数日前に発表された例の「犯行声明」の件についてです。

まずはこちらをご覧ください。
手渡された写真を見る。
“これはひどい……。”
“こんなことを一体だれが?”

今回爆破された場所は、トリニティの中でも警備体制の厳重な場所。一般の生徒が立ち入ることは難しく、ましてや爆発物の設置など……。

信じがたい事ですが、手引きした者がいることは間違いありません。早朝だったことも幸いし被害は最小限に抑えることができましたが、これはその気になればより多くの被害を出せるというメッセージだと受け取っています。

そしてこれが、事件発生から数時間後に発表された犯行声明です。
犯行声明の映像を見る。

「ティーパーティー並びにすべての派閥の解散と新政権の樹立」これが彼女たちの要求です。自分たちの主導の元、全ての生徒たちの意思を統合すると……。

「ある協力者」、声明文のこの一言が原因で各組織は騒然。皆、犯人探しに躍起になっています。エデン条約での爪痕が残る中、ようやく再興への道を歩みだしたというのに、我々はまた「誰かを疑わないといけない」のでしょうか……。

首謀者の名前は「朝永(ともなが)ナツミ」、悪名高い七囚人の内の一人ですが、元はトリニティの生徒で、自治区でも有数である名家の出でした。

ティーパーティーの当主を見据え英才教育を受けていたようですが、それに反発した彼女は正義実現委員会の門を叩くことになります。一年生でありながら着実に実績を積み重ね瞬く間に頭角を現していったそうです。

しかし、派閥や政治争いに直接かかわる中で学園に不信感を抱いた彼女は、ほどなくして正義実現委員会を去り、自治区内で独自の治安維持活動を始めることになります。

それからです、彼女は朝永家のコネクションと持ち前のカリスマで、当時の政権に不満を抱いていた生徒を次々に味方につけ、最終的に僅か数十名でティーパーティーの当主を人質に立てこもり事件を引き起こすことになります。

規模が規模だっただけに大事には至らず、すぐに身柄を拘束されることになったのですが、彼女の危険性を見抜いた当時の上層部と、名家の名に傷がつくことを嫌った朝永家の両者の判断によってその身柄を矯正局に分け渡すことが決定しました。

犯行に及んだ他の生徒も重い処罰を受け、徹底された情報統制により事件自体もいずれ人々の記憶から忘れ去られていくと思っていたのですが。彼女の意思は今も尚この学園に存在しているようです……。

我々も失念していました。彼女が矯正局から脱走したという情報を得た時点でこうなることは予想できていたはずなのに……。彼女は、我々がエデン条約の一件での事後処理に追われている間に着々と計画を進めていたようです。

それだけではなく、彼女たちは引き入れた組織の部員から得た情報をもとにSNSなどで対立や不安を煽るデマを流しているようです。

そしてどうやらこれが、今まであまり派閥意識を持っていなかった生徒たちにヒットしてしまっているようで……。これまでの醜い政治争いに嫌悪感を抱いていた生徒たちの中には彼女の主張に賛同する者も現れ始めました。

広場では現政権に対するデモ活動も見られるようになっています。暴走する生徒たちの歯止めが利かなくなりつつあります。早急にナツミたちの行為を止めなくてはなりません!

調査の結果、彼女たちは自治区にある複数の拠点で活動を行っていることが判明しています。しかし、構成員には救護騎士団やシスターフッドといった既存の組織の部員も含まれていて、外からでは判別できない上に直接活動を行っていない”ダミー”の拠点もあるようです……。

彼女の正確な潜伏場所が判明していない以上、しらみつぶしに拠点を攻撃するしかありませんが、もし早まってダミーの拠点を攻撃すれば、それこそ彼女たちの思う壺です。

「フィリウス分派のナギサに従う正義実現委員会が武力行使で事件を隠蔽」世間の目には当然そう映ります。世論は大きく傾くでしょう。

このままでは、我々が動こうが、動かなかろうが、各派閥、組織間で互いを憎しみ合う感情は収まりません。すべてを憎みひとしきり争い合ったところで生徒たちは望むのでしょう「新政権の樹立」を……。

約束の時間は5日後の明朝、もう時間がありません。我々には必要なのです。彼女たちを討てる大義名分が!

…………。

……一つだけあります。政治的、公的なしがらみのない、それでいて武力介入ができるだけの力を持った組織が。
“トリニティ自警団か……。”
02 守りたいもの

つまり、あなた方にナツミたちの潜伏場所への奇襲をお願いしたいのです。

今度こそ私たち自警団の出番ですね!

それなら任せてください!!この自警団のスーパース……。

待ってください!この作戦には続きがあります。それは……。

……?

それは、最終的に正義実現委員会が、彼女たちを制圧したあなた方の身柄を「自治区内での暴動行為の容疑で拘束する」というものです……。

拘束⁉ど……どうしてですか⁉私たちは、学園の平和のために戦うのではないのですか?

……そういうことですか。

スズミさん?

トリニティ全体を巻き込んだこの騒動で正義実現委員会が動けなかった事実は不信感を呼び、新たな政治的抗争の火種になる。

皆さんの敵意が複数に分散してしまっているこの状況で、分かり易い「悪役」として周囲のヘイトを一身に集めた後、大衆の面前で「正義」の名のもとに裁きを受ける存在が必要だと……。

それが、私たち「トリニティ自警団」だというんですか……?そんな……。

申し訳ありません……無茶なことを言っているのは承知の上で頼んでいます……!ですが、あなたたちをおいて他にいないのです!この状況を打開できる存在が!

……少し考える時間をいただけませんか?一日、いえ、半日で構いません。それまでに答えを出しますから。

もちろんです。

ありがとうございます。……先生。久しぶりに「エスコート」させていただけませんか?
~トリニティ・商店街~

ここは、「カフェ・ミルフィーユ」以前レイサさんに教えていただいた場所で、最近はパトロール終わりに立ち寄る機会も増えました。それまではあまり関心がなかったのですが、今では毎月の新作スイーツの発表を楽しみにしています。
~遊園地~

ここには以前、先生と訪れたこともありましたね。ここの観覧車から見える星空は今でも変わっていません。昔も今も私にとっては特別な場所です。
それからスズミにエスコートしてもらいながら、トリニティのいろんな場所を見て回った。

………………。
“スズミ……?”
“どうかしたの?”

改めて実感しました。私はやはりこの学園が好きです。もちろん完璧とは言い難いですし、醜い部分も少なからずあります。それでも、だとしても、私はこの学園を守りたい……この学園とそこで出会った方々は、私にとってはかけがえのない存在です。

だからこそ、あんなやり方を認めるわけにはいきません……‼互いの疑心感や憎しみを煽り、恐怖によって統治しようなど……!

……初めから答えは出ていたのかもしれません。先生、私はあの任務を引き受けようと思います。私の大切なものを守るために、自分の信じる正義のために。
“本当に大丈夫?”
“この作戦が終わればスズミたちは……。”

お気遣いいただきありがとうございます。ですが、心配しないでください。私たちはただ犠牲になりに行くのではありません。これは守るための戦いなのです。もう何も怖くはありません。私は、私にできることをするだけです。
“そうか……なら私も。”
“自分にできることを精一杯やり遂げてみせるよ。”
03 平和を願う者たち
~トリニティのとある廃墟~

以上が作戦の内容になります。

これまで”グレー”な存在であった私たちはこの任務をもって完全な”黒”になります。もう後戻りはできません。手を引くなら今の内です。心配せずとも脱退したことを責める者などここにはいません。

これまで自警団としてあまり言葉を交わしたことのない皆さんに急にこんな事を頼むこと自体、無茶な話であることも承知しています。しかし、今は一人でも多くの力が必要です‼どうか皆さんの力を貸していただけないでしょうか?

ど……どうしよう……。

そこまでの事なんて私には……。
「私はやりますよ!!!!!!!!!」

私は……私はやります!!!!大好きなこの学園を、みんなを守りたいです!!この宇沢レイサ、今回の任務、どんなことがあっても必ずやり遂げてみせます!!

……わ……私もやります!やらせてください!!自分たちの学園の平和は自分たちで守って見せます!

スズミさんだけにいい恰好はさせませんよ!こんな日のために活動を続けてきたんです。自警団の底力を見せてやりましょうよ!

皆さん……感謝します!!
~正義実現委員会部室~

ハスミ先輩。例の作戦の件、トリニティ自警団からの承諾を得ました。かなりの数の団員が賛同してくださったようです。

彼女たちに感謝しなくてはなりません。後は、ナツミの正確な居場所さえ掴めれば……。
“それなら私に任せてほしい。”
“「彼女」ならきっとこの問題を解決してくれるはず。”
~数日後~

(通信)遅くなって済まない。例の件だが、奴の潜伏場所がある程度絞り込めた。どうやら構成員の中に金銭欲しさにブラックマーケットに情報を流した奴がいたようだ。

(通信)愚かなものだな……。今回の作戦から加わった新参者の中には、まだ奴に忠誠を誓い切れていない者もいるという証拠だ。事が事だからな、組織の中には自分の行為に迷いを感じている者も少なくはないのだろう。

(通信)だがそれも時間の問題だ。私も経験しているから分かる……。人の心というものは酷く脆いものだ。恐怖や悲しみによって生じた心の隙間に、それらしい大義や使命を捻じ込まれれば、人は簡単に自分の意思を見失う。

(通信)先生、奴らを討つなら組織が完全ではない今しかチャンスはない。時間が経てば経つほど組織の意思はより強固なものとなり、その勢いはやがて学園全体を巻き込んでいくだろう。その時、奴らは本物の”革命組織”になる……そうなってからでは誰も奴らを止められないだろう。

(通信)……すまない先生。トリニティの各勢力が絡む以上、私にできる事はここまでだ。それと先生……。
“どうかしたの?サオリ?”

(通信)一度はトリニティを転覆させようとした私がこんなことを言うのも可笑しな話だが、どうかトリニティを救ってやってほしい……。あの場所は、アイツの……アズサの大切な居場所だからな……。
“ありがとうサオリ。必ず守ってみせるよ。”
“後はこちらに任せてほしい。”
~トリニティのとある廃墟~

作戦は順調ですね。SNSで流しているデマも浸透し、デモの規模も日に日に拡大。正義実現委員会をはじめとした各組織も大きな動きを見せていません。ご覧くださいこのトリニティ・スクエアの様子を。
~トリニティ・スクエア~

今すぐにデモ活動をやめてください!武器を下ろしてこちらの誘導に従ってください!!

どこで爆発に巻き込まれるかわからないこの状況で家で大人しく待ってろと言うつもり⁈冗談じゃない……!!こんなことになったのも全部、無能なティーパーティーのせいよ!!

どこの誰が裏で手を引いているのか知らないけど、一人勝ちなんてさせないわ!このトリニティ・スクエアにだって爆弾があるかもしれないのでしょ⁈いいわ……全員ここに引きずり出して仲良く共倒れと行こうじゃないの!!

いい加減に目を覚ませ!恐怖で我を失ったか⁈まったくどいつもこいつも……!!

そういうアンタたちもこんな一大事って時に随分暇そうじゃない!ここまでされて上層部の対応も後手後手、犯行声明から何日経ったと思っているの!これでは正義実現委員会も形無しね……!

何だと⁈我々の正義を侮辱するか……貴様たちこそ、こんなところにいないで、教会で届きもしない祈りでも捧げていたらどうだ?

いい度胸じゃない……ナギサの”飼い犬”の分際で正義が何だと大層なことを!!かかってきなさいよ!威勢がいいのは口だけかしら?

……堪忍袋の緒が切れたぞ!貴様だけは……!!

お願い……もうやめてよこんなこと……”誰でもいいから”この状況を何とかしてよ……!!

ほんの少し餌を巻いてやっただけでこの有様だ。もはや自分が何を憎み、そして何が正しいのか理解しているものなどあそこにはいまい。

現政権への漠然とした不満、派閥・組織間の軋轢、やり場のないフラストレーションが一気に溢れ出す。奴らは火が付くのを今かと待ち望む導火線だ。後は我々が火を灯すだけ、それですべてが変わる。

ティーパーティーからの返答はまだありません。各ポイントに設置した爆薬のセットも完了しています。後は明日の作戦実行を待つのみです。

ついに現れなかったか……。

どうかされましたか?

いや、ただの独り言だ。作戦の最終確認を済ませておけ。私は少し休む。
~作戦当日~

再確認ですが、この作戦を知っている者は極少数です。無論、余計な誤解を生まないために先生もこちら側で指揮をとっていただきます。

作戦が開始すれば私たちから皆さんにできることは殆どありません。せめてもの助けになればとこちらで装備を用意しました。ここにあるものは好きに使っていただいて構いません。

す……凄い数の装備です……それにどれも最新式の!

感謝します。

感謝しなくてはならないのはこちらの方です。申し訳ありません……あなたたちだけにこんな重い役目を背負わせてしまって……。本来なら私たちが……。

顔を上げてくださいハスミさん。私たちなら大丈夫です。自分たちで決めたことですから。それに……。

「誰かがやらないといけない」ことですから。
“スズミ、そしてみんなも必ず無事に帰ってきてね。”
“どんなことがあっても私はみんなの見方だから。”

ありがとうございます。その言葉が聞けただけで十分です。

……それでは、トリニティ自警団、任務を開始します!
04 それでも前に
~トリニティ自治区~

ドアを開けろ!トリニティ自警団だ!!

トリニティ自警団⁉話が違うじゃない!誰も私たちには手出しできない筈じゃ⁉

覚悟しなさい、この「トリニティのダッシュロープ」がまとめて御縄にしてやるんだから!

(通信)現在、自治区の各地にてトリニティ自警団と思われる組織の暴動が発生。各部員は暴徒の鎮圧にあたってください。

いよいよ始まりましたね……。
~トリニティ・スクエア~

お~お~なんだか大事になってきたね~。

広場に鳴り響く怒号と銃声、それはどこか物哀しく誰かに救いを求めているような……。

こんな時にいつものやめてよ!調子狂うのよ!とっととこんな所から逃げるわよ!

どうしてこんな事に……自警団の人たちってちょっぴり頑固だけど、根はやさしい人たちだったのに……。

(レイサ……あんた今どこで何やってんのよ……。馬鹿なこと考えないで無事に帰ってきなさいよ……。)
~トリニティのとある廃墟~

トリニティ自警団が各拠点に攻撃を仕掛けているようです。それもダミーの拠点も含めて片っ端から。正気とは思えません……。どうなされますかナツミ様?

構わない、計画は続けろ。所詮寄せ集めの集団、長くは持つまい。それにしてもあの装備……そうか……正義実現委員会の差し金か。いかにも奴らの考えそうなことだ。

……気に入らないな。いつまで自分たちだけ日の当たる場所にいるつもりだ。

まだ理解できないのか!この戦いが武力や戦略の差によって決するものではないということに……。

初めから分かり切っていたことだが、実際にこうして見せつけられると敵ながら無念でならない。ここまでしても変われないのだなこの学園は……。

……これより作戦の最終フェーズに移行する。設置した爆薬のタイマーを起動しろ。
~正義実現委員会部室~

それにしてもトリニティ自警団の善戦ぶりは凄いですね……。正規の訓練も受けていない彼女たちがどうしてここまで……。

彼女たちが強いのは当然です。自治区で発生するトラブルの初期対応は彼女たちが担っているのです。踏んでいる場数が違います。

それでも今まで彼女たちに重要な任務を任せられなかったのは、正義感の高さに反してフリー故の使命感や責任感の無さがネックだったからです。

しかし、今の彼女たちにはそれがある。足りなかった最後のピースが埋まったのです。今のこの一瞬、今夜限りは我々以上の輝きを放っているのかもしれません。
~トリニティ自警団作戦本部~

スズミさん。ポイントCの制圧に当たっているレイサさんから報告です。

変わってください。

(通信)スズミさん!ポイントCの制圧が完了しました!!ですが……

(通信)………………。

レイサさん?

(通信)ですが、こちらはどうやらダミーだったようです。任務とはいえ無実の生徒を手にかけてしまいました……。すみません、こんな気持ち初めてで……。

(通信)これではもう「自警団のスーパースター」は名乗れませんね……杏山カズサに合わせる顔がありません。

レイサさん……。

(通信)スズミさん、私たちのことは構わず任務を遂行してください!!この任務が成功すればトリニティ自警団は胸を張って学園に帰れます!

(通信)気持ちが落ち着いたら、私も次のポイントへ向かいます。私なら大丈夫です……!まだ戦えます!!

(通信)それでは失礼します。スズミさん、どうかご武運を……!!

他のメンバーからも続々と報告が上がってきています。これらと先生からの情報を照合すると彼女の居場所はおそらく……。

……行きましょう。皆さんの覚悟、決して無駄にしたりはしません‼
~トリニティのとある廃墟~

ナツミ様、そろそろ移動のご準備を。

烏合の衆だと侮っていたが中々やるようだ。

やけに警備が手厚い……!彼女がここにいることは間違いなさそうですね。

いたぞ!トリニティ自警団だ!!これ以上お前たちの勝手にさせるか!

スズミさん!もう時間がありません!ここは私たちに任せて先に行ってください‼スズミさんはナツミを‼

すみません……ここは任せました‼

そうはさせ……ゴホッ…!なんだこの煙、煙幕か……!

お前たちの相手はこの私だ!一度は聞いたことがあるだろう?「トリニティの駆け回る煙幕弾」の名を!

ご生憎様だけど初耳よ!そんなダッさい通り名!

なら、二度と忘れられないように教えてやるよ。その服と頭に煙の臭いが染みつくまでたっぷりとな……!

なんなのよ……この気迫……いったい何がこうまでしてこいつらを突き動かすの?
~トリニティ・テラス~

(彼女たちはまだ戦っているのですね……「犯行声明に踊らされ、決断を早まった愚か者」の汚名を着せられても尚……)

(彼女たちは心から信じている、この学園の明日を……私は、それに応えなければ、応えなければいけないはずなのに……)

(失敗すれば全てを失うかもしれない……地位も名誉もこれまで積み上げてきたもの全て……)

(私は……私は……)

(回想)「誰かがやらないといけないことですから」

……そうです、何を迷っているのですか。私は、私にできる事を、今の自分にしかできないことをするだけです……!!彼女たちが信じているというのに、私だけ信じないわけにはいきません!!

サクラコさんとミネさんに至急連絡を!
05 交差する正義
~トリニティ自治区~

あなたたちの負けよ……今すぐ爆弾の場所を吐きなさい!自分たちがやろうとしていることが分かっているの?こんなことを続けていたら、本当に何もかも失ってしまうわよ……!

“失う”ですって?……あなたたちは何も分かっていないのね。これから失うんじゃない……私たちは「失ったものを取り戻すために」戦っているのよ……!

なんですって……。

今でも覚えているわ。救護騎士団時代、搬送された重症の患者がパテル派だからという理由で、受け入れを拒否することを上から命じられたあの日のことを……。

私は、命令を無視して患者のオペを行った。救護騎士団として当然の務めを果たしただけ。それなのに、私に待ち受けていたのは、過去の実績の剝奪と館内での壮絶ないじめ。退部を余儀なくされた私に味方するものなど誰もいなかったわ……。

ほかの方たちもそう……。私たちは、下らない派閥争いによって集団から弾き出され、調和を乱す不穏分子として学園から黙殺されたのよ……!

でも、ナツミ様だけは違った。学園すら見放した私たちから目を背けずに、手を差し伸べ、”使命”まで与えて下さった……。あのお方は、ナツミ様は、私たちにとっての”救い”なのよ……!

分かっているわよ……自分たちのしようとしていることの重さくらい……。でも、今の学園には必要なことなのよ!これ以上、私たちのような”犠牲者”を生み出さないために……‼

だからってこんなやり方が許されていいはずないわ!目を覚ましなさいよ……そうやって弱みに付け入って、いいように利用しているだけじゃないの……!

確かにそうかもしれないわね……。でも仕方がないじゃない、自分たちを見捨てた学園と、手を差し伸べてくれたナツミ様、どちらに付いて戦うか選択を迫られれば後者に付きたくもなるわよ!

これ以上話しても無駄よ……私たちを止めたければ、「力」じゃなくて「態度」で示してみなさいよ!もっとも、今の学園にそんなことはできないのでしょうけど……。フフッ……アハハハハハッ‼
~廃墟の最深部~

こんなところにいたのですね。朝永ナツミ……‼

貴様がトリニティ自警団の……名前は確か守月スズミだったか。

随分と派手にやってくれたな。しかし、貴様はこんなことをして自分たちがどうなるか分かっているのか?たとえ我々を倒しても正義実現委員会が”貴様たち(トリニティ自警団)”をタダで帰すとでも?

誰の入れ知恵かは知らんが、非正規組織として武力行使に出た“貴様たち(ヴィジランテ)”は、もはやただの“処刑人(パニッシャー)”だ。事情を知らない生徒たちは貴様たちの行いを見てどう思うかな?

分かっています。分かった上で私たちは戦っています。

尚のこと理解できないな。自分たちが使い捨ての駒だと知りながらなぜ戦う?なぜそうまでして今のトリニティにこだわる?

スズミ、貴様は我々を単なるテロリストだと思っていないか?

違うとでもいうのですか?

そうとも。我々は何もこの学園を崩壊させようとしているのではない。この学園を”導いて”やると言っているのだ。

貴様もエデン条約調印式、そして今回の一件でのトリニティの醜態をその目で見たはずだろう?下らない”派閥意識”や”組織間のしがらみ”によって、多くの者が為すべきことを為せず、無益な争いを続け、事態を悪化させる。

広場のデモ隊を見てみろ。愚かな連中だ……。情報を精査せず、大した意見や主張も持たないまま、目論見通り我々が与えた仮想敵に怒りをぶつけている。奴らは矛先を向ける相手すら満足に選べないのだ。

スズミ、物事を大局的に見れる人間などほんの一握りだ。派閥がなんだと言っているが、多くの者は自分が何者かも分からないまま、流されて、信じ込んで、騙されて、そうやって”誰かにとって都合の良い真実”に翻弄され続けるだけだ。下らない政治ごっこの操り人形としてな。

我々はそんな連中を開放し正しき方向へ導くために行動している。愚かな大衆の意思は聡明な指導者の下で統合されるべきだ。あの学園にいる意味なら我々が与えてやる。もう見えない何かと戦う必要も、己の立ち位置で戸惑うこともない。そんな学園を創ってやると言っているのだ!

それに、たとえ我々の考えが理解できずとも、大衆は私を選ばざるを得ない。

夜明けと同時に、自治区の複数の人口密集地に設置した爆薬が起爆する。今度は脅しじゃない。確実に多くの犠牲が出るだろう……。

事態を未然に防げなかった正義実現委員会とその指揮権を持つティーパーティーの信用は今度こそ地に落ち、秩序を失った学園は安定を求めて新たな指導者を求める。

その時、極限まで悪化した環境に身を置く大衆は、次の環境を「最低な今」と比較して選択するだろう。世論は一日でも早く、少しでも楽だと思う方へ流れていく……たとえそれが過去のものより劣っていたとしても、間違ったものだと理解していてもな。

分かるかスズミ?この不安定な学園を動かすにはこれだけで十分だ。未来を見通した”最善の一手”も、全てを捻じ伏せる”圧倒的な戦力”も必要なかったのだ。

そうやってあなたは全てを上から見下ろして、それらしい理屈ばかり並べて……!!

学園を変えるためだと大義を振りかざし、そこで生活する生徒たちが積み上げてきたものを平気で踏みにじろうとする……!!そんなあなたが指導者なんて笑わせないでください!!

分かり合えないから全て壊すなど……皆、それぞれの立場、それぞれの信念があります。それで良いではありませんか!自分たちの為すべきことは自分たちで決めます!必要なのはあなたのような指導者ではなく「互いの意思を認め尊重する心」のはずです……‼

確かに今の私たちにはそれが欠けていたのかもしれません。ですが、それが分かった今だからこそ、私たちは変われるはず……変わろうとしています‼その歩みをあなたのエゴで止めるわけにはいきません。私はそのためにここにいます‼

なら、それはいつ変わるのだ?「その日」が来るまでに一体どれだけ苦しめばいい?皆、貴様のように強くはない。終わりの見えない悪意と憎悪にこの学園はもう耐えられないところまで来ている。新政権の樹立、この学園を変えるために……

「誰かがやらないといけない」ことだということがなぜ理解できない!

“あの時”のあなたも確かそうおっしゃっていましたね……。

……?

やはり覚えてはいませんでしたか。

2年前、市街地で起きたヘルメット団の暴動、戦闘に巻き込まれ負傷していた私をあなたは助けてくれたのですよ。

あの時、私はあなたに問いました。「正規の組織でもないあなたがどうしてここまでするのか、一体何を信じて戦っているのか?」と。

「正義というものは、一つの小さなことから正すのもの。」あなたはそう答えました。それが何故……いつからですか?どうしてあなたは変わってしまったのですか?

そうか……貴様はあの時の。当時の私はそんな戯言を……。それにしてもそんな事をまだ覚えていたとはな。

一日たりとも忘れたことはありません。それに、”戯言”なんかじゃありません。

この学園に入学して、トリニティの生徒がほかの学園の生徒に襲われる事件が増加したと耳にした時、真っ先にあなたの姿が脳裏をよぎりました。

あなたに助けられたからこの活動を始めた……。あの言葉があったから今日まで活動を続けてこられた……。あの時、あなたは確かに一人の生徒を”導いた”のですよ。

そんな貴様が今こうして目の前に立ちはだかるか……まぁいい。私は貴様とこれ以上、不毛な議論を重ねるつもりも、昔話に花を咲かせるつもりもない。そろそろ終幕と行こうか。

貴様も哀れだなスズミ。爆破までのカウントダウンはすでに始まっている。ここで私を倒したところで結末は変わらないというのに……。

我々という脅威に対し、自らの手を汚そうとすることなく、”貴様たち(トリニティ自警団)”のような存在に頼った時点で勝敗は決していたのだ。

貴様も苦しかっただろうに、ここまでよくやったと誉めてやろう。だが、もう終わりだ……今楽にしてやる……‼

負ける訳にはいきません……もう、あなたの世話にはなりません‼
06 誰がために戦う

私は、この学園を変えなくてはならないのだ……!!

私は、この学園を守りたいのです……!!

チッ……やるな……‼トリニティにまだこんな奴がいたとはな……!

(くっ……強い……!このままでは……)

(通信)スズミさん‼

(通信)ナツミ様!!

レイサさん⁉

こんな時に何の用だ!!

(通信)ティーパーティーから放送です!とにかく聞いてください‼

我々ティーパーティーは、一連の騒動に対してシスターフッド、救護騎士団との一致を得た決議をここに発表します。我々はナツミ一派に要求の撤回を求め、各分派、組織との共存を改めてここに宣言します。

第一回公会議によって一度は一つになった我々ですが、実態として分派、組織間でのわだかまりは依然として残ったまま、水面下での政治抗争は続き、互いが持つその不信感は、先のエデン条約調印式、そして今回の騒動で内紛という最悪の形で現れました。

多くの血が流れ、互いの心に深い傷跡が残りました。我々は一度のみならず二度もこのような失態を許してしまったのです。三度目など決してあってはなりません。我々は今一度、互いの認識について考えを改めなくてはなりません。

いがみ合い、疑い合い、憎しみ合う政治はもう終わりにしましょう。この学園が次の段階に進むためには、我々は変わらなくてはなりません。形式上の協力関係ではなく、真の意味で互いを理解し、手を取りあう必要があるのです。

誰が言ったかもわからない“虚偽の情報(ディスインフォメーション)”に惑わされてはなりません。真実はその目で確かめるのです。そして、我々もこれからは打ち明けていかなくてはならない……。

どれだけ時間がかかるかはわかりません。しかし、前に進むことをあきらめてはなりません。私たちは信じています。我々は変われるはずだと……。

最後に我々の態度が不鮮明であったがためにこれまで多くの生徒に苦渋を強いていたことを深く謝罪します。この表明にすべての生徒が同調することを強く希望します。

(ナギサ様たちも「戦って」おられるのですね)

(通信)広場でティーパーティーを糾弾していたデモ隊も解散して、今は各組織を巻き込みながらナツミ一派に要求の撤回を求めるため一丸となって進行しています!凄い数ですよ!

(通信)構成員の証言により爆弾の位置も判明して、周囲の住民の避難も始まっています!もう彼女たちに武器は残っていません!後はナツミだけです!スズミさん!!

トリニティは今、自分たちの意思で再興への道を歩みだしました。もはやあなたたちの行動は無意味です。

馬鹿な……ここまで織り込み済みだったの言うのか……。

いいえ、私もここまでは予期していませんでした。しかし、安心してください。ここまで事が進んだ以上、私たちも後に引けないことに変わりはありませんから。

お互いこれからのトリニティには不要な存在というわけか……。

(通信)お話し中に失礼、中継見ましたよ。どうやらあなたの作戦は失敗に終わったようですね。

あぁ……そのようだ。悪いが”借り”は返せそうにない。学園を手中に収めるどころか、両手でも抱えられないほどの大きさにしてしまったようだ。

(通信)少し嬉しそうですね。

さぁどうだかな……。

(通信)しかし、構いませんよ。こちらとしても今回の一件で有意なデータを集められたことですし、報酬に見合うだけの働きはしたと言えるでしょう。流石と言っておきましょうか。

(通信)私はそろそろ”ある準備”に取り掛からないといけないので今回はここまでということで……。追加報酬としてあなたには休暇を差し上げます。この機会にゆっくり羽を休まれてはいかがですか?

「休暇」か……もう十分休ませてもらったんだがな。まぁいい、”いい仕事”をさせてもらった、機会があればまた会おう。

守月スズミ、こうなった以上、この勝敗の結果はトリニティの行く末には関係あるまい。だが、私もこのままむざむざと投降するつもりはない。貴様とは個人的な決着がつけたい……‼

……いいでしょう。最後までお付き合いします。

礼を言う。この世に生を受けてから今日まで学園の政治に振り回され続けてきたが、貴様と戦っているこの一瞬だけはそんな呪縛からも解放された気がするのだ……。

これで終わりにしよう……我々がこの学園の平和の礎たる”最後の犠牲者”だ。出し惜しみはしない、全力で行くぞスズミ……!!!!
07 新たな学園を照らす朝日

私の……負けだ……。

(紙一重でした……)

……最後に一つお聞きしてもよろしいでしょうか?

……いいだろう。話に付き合ってやる。ただし夜明けまでだ。

どうして潜伏場所をブラックマーケットに流したのですか。ここまで綿密に計画を練っていながら、こんなミスがあるとは思えません……私たちを、学園を試していたのですか?

情報を流したのが私の指示だとでも思っているのなら私の事を買い被りすぎだ。しかし、”半分”正解だと言っておこう。

情報が流出したのはメンバーを統率しきれなかった私の不覚だ。だが、私は気付いていてあえて止めなかった……。

我々の居場所が割れたところでこちらが優位であることに変わりはない。だからこそ私はこの目で見てみたくなったのかもしれない……誰も手出しができないこの状況で、学園の平和を願い立ち上がる者たちの姿を、貴様たちのような……。

言っただろう、単なるテロリストではないと。我々とて心から待ち望んでいたのだ。この学園に訪れる”革命の朝日”をな……。

それだけ学園のことを想っていながらあなたはどうして……あなたの本心は、一体どこにあるのですか……?

変革を促し政権を乗っ取ろうとしたのは紛れもなく本心だったよ。だが、地位や名誉、大義のためだけに戦っていたわけではない。

”思い出させたかった”のだ、光あるところに必ず影もあることを……。ティーパーティーや正義実現委員会という光が、我々や”貴様たち(トリニティ自警団)”のような存在を生み出したように、平和や権威を享受する者がいる一方で、そのしわ寄せを受け不平に苦しむ者がいることをな。

全てを救うことなどできないことは百も承知だ。分かっているさ、我々の目的が果たされたところで、いずれどこかで同じような影が生まれるだけだと……。

しかし、だからと言って、その一生を影で過ごせと、定められた運命なのだと言われて素直に受け入れられるはずがないだろう……。私は彼女たちをもう一度、日の下に連れて行ってやりたかったのだ。結果は御覧の有様だがな……。

私は、思い上がっていたのかもしれないな……影は決して光を凌駕することはできないというのに……。

ナツミさん……卑怯ではありませんか、今になってそんなことを言い出すなんて……。

質問への答えはここまでだ。もうじき夜が明ける。

スズミ……戦いの中で分かったことがある。貴様と私は同類だ……その愚直なまでの正義感と愛校心はいつか裏切られ、憎しみはやがて学園を脅かす刃に変わる!!

すでに貴様は今回の一件で染めてしまったのだ。黒を加えた白いインクが二度と元の輝きを取り戻せないように、貴様はもう”白(みんなの元)”には戻れまい……。

今度は”貴様たち(トリニティ自警団)”がこの学園の「影」になる番だ。その意味の重さに貴様たちはいつまで耐えられるかな?

独房から見物させてもらうぞ、貴様と貴様の信じた学園の行く末を……。

………………。

そこの2人、銃を捨てて大人しく投降しなさい!!

(時間通りですね。夜が明ける……ようやく終わりです)

スズミ……。そこのあなた、彼女に手を貸してあげてください。

しかし、彼女たちは……。

いいですから早く……。

は……はい!分かりました!おい!肩を貸すからこっちへ来い!

お世話をおかけします……。

ハスミさん。私たち……いえ、”貴方たち”の勝利です。

………………。
~数日後~

あれから程なくしてトリニティを騒がせた大事件は無事に収束。私たちトリニティ自警団は自治区での暴動行為で罪に問われることになりました。事情を知る各組織の幹部の方々の計らいがあってなのか、思っていたより軽い処分で済みました。

ナツミさんは、矯正局ではなくトリニティで身柄を預かることになったそうです。二度と同じ過ちを繰り返さないように、歴史の闇に葬るのではなく、トリニティの一員として、彼女と向き合っていくためだと皆さんは仰っていました。
~トリニティ・テラス~

ナギサ様、ナツミおよび構成員への取り調べが完了いたしました。それと……。

……彼女たちへの処罰は本当にあれでよろしかったのですか?

もちろんです。彼女たちのことを二度も見捨てたりはしません。

ナツミについてですが、こちらの問いに素直に応じていたのは少々意外でしたね。

彼女もようやく”バトンを手放せた”のですね……受け継いだものを握りしめたまま果てることなく……。

学園をより良き方向へ導かんとする大義とそれを実現するに足る力、その二つを手にしてしまうといつの間にか忘れてしまうものです。

「他者を信じ、自分の意思を次の世代に託す」という選択肢を……。

それは妥協でも、問題から逃げている訳でもありません。言葉を紡ぎ、心通わせることのできる我々人間にのみ許された未来を想う尊い行為。

課せられた責任を一人で背負いきることが”大人”だと思っていましたが、どうやら少し違ったようですね。

エデン条約調印式から漠然と浮かび上がっていたイメージが今回の一件ではっきりしました。もう見失ったりはしません。

ナツミさん、あなたから受け取ったバトンは私たちが必ず繋いで見せます……。

そして、スズミさんは……。
~聴耳会にて~

それでは守月スズミ、最後に何か言い残すことはありますか?

いいえ。何もありません。

(私にできることは全てしました。悔いなどありません。後は、この学園がより良い道を歩んでいくことを願うだけですが、何も心配はありません。この学園なら、彼女たちならきっと……)

(貴方たちの意志の強さには敬意を表します。今回の取り調べで誰一人として作戦を理由に罪から逃れようとする者はいませんでした。誰一人……)

(今回の一件で″彼女たち(トリニティ自警団)”を失った事実は大きい……。我々、正義実現委員会はより一層気を引き締めていかなくてはなりません)

(必ず守って見せます……彼女たちが繋いだこの学園の平和と正義を‼)

あれから自警団の活動はめっきり減りました。世間からの風当たりも強いままです。ですが、私は信じています。“証(バッジ)”は奪われようとも“誇り(プライド)”は失くさない、正義を信じる心がある限りトリニティ自警団は必ず復活すると!!
08 トリニティの走る閃光弾
~事件収束からしばらくたったある日~

おい!!この店の売り上げを全部出せ!余計な抵抗をしたらタダじゃすまないぞ!!

それにしても最近は好調だな!ここには正義実現委員会のやつらもいないし。あの事件以来、自警団の連中もすっかり見なくなったしな!!

やれやれ……あなたたちという方は……。

あぁ?なんだテメーは?

閃光弾投擲!!

ぐぁー!!この光は⁉まさか……!”アイツ”はもう……。

まったく懲りない方たちですね。自警団の活動はあの日を最後にと思いましたが、どうやらまだ「誰かがやらないといけないこと」のようですね……。

(回想)スズミ、貴様は私と同類だ……‼

私はあなたとは違うやり方で正義を成します。今の自分にできることを……これからもずっと……。

それでは、パトロールの続きを始めましょう。
トリニティ自警団の一番長い夜 完
最後に
拙い文章でしたが最後まで読んでいただきありがとうございました。ぜひコメント欄などであなたの「自警団像」をお聞かせください。
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