作品紹介(きらら本誌)

【ゲスト作品紹介】まんがタイムきららミラク編(vol.1~2013)

惜しくも連載に届かなかった「ゲスト作品」、今となっては読む手段も非常に限られ、読者の記憶から忘れ去られるのを待つ一方となってしまいましたが、今に続くきららの長い歴史の礎となった彼らの存在を風化させないためにも、私の知っている範囲で作品を簡単に紹介していきたいと思います。

※更新は不定期になります。連載作品のゲスト回は対象ではありません。

vol.1~

『そこにいず』(著者:染谷みのる)

掲載号:2012年3月号・4月号・5月号
❝この町には“さかささん”という神様がいる❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2012年3月号』.芳文社.119頁)

「さかささん」という神様がいるという言い伝えのある学校を舞台に、次々と巻き起こる怪現象を題材にした作品。一話完結で各話毎に登場人物ががらりと変わる、きららとしては少々珍しいオムニバス形式をとっています。オカルトを題材にした作品ですが、ホラー要素は少なく全体的に温かみのある作風、登場人物たちの学校生活に秘かに潜む怪異をゆったりと描いています。

さかささんについての謎や伏線を残し先が気になる展開でしたが、惜しくも3話のみの掲載。さながら学校に伝わる怪談の如くひっそりと表舞台から姿を消しました。

『虹色教室』(著者:ゴロボッツ)

掲載号:2012年3月号・4月号
❝そっかクロちゃん 昨日から地球だっけ❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2012年3月号』.芳文社.152頁)

地球から遠く離れた宇宙に存在する超次元文明、そんな文明圏にあるごく普通の学校で選抜された4人の少女たちが地球に派遣されるという物語。彼女たちは地球文明を学ぶべく、超化学を駆使して時空間旅行をしているようで、第2話では日本の江戸時代を舞台に水戸黄門で有名な徳川光圀の調査を行いました。

連載が続けば日本を舞台に歴史上の人物について、後世に伝えられた人物像と実際の人物像の違いに着目しながら漫画形式で紹介する学習漫画的なポジションを確立していたかもしれませんが、残念ながら2話のみの掲載となりました。

主な登場人物:アカ、クロ、アオ、シロ

『彼女は彼女だけど彼女じゃない』(著者:Anmi)

掲載号:2012年3月号・4月号・6月号
❝それはある日のこと 突然走ってきた彼女が僕にくれたもの それはきっと 彼女とボクをつなげる 運命でした❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2012年3月号』.芳文社.183頁)

人間になるという望みを叶えるべく、交通事故でこの世を去った学校一の美少女、山田愛美(まなみ)の体を借り現世に降り立った”天使”のシエル。人間になる条件は、愛美の幼馴染であり”堕天使”である男子高校生、星也を抹殺することであった。星也を殺したいポンコツ天使のシエルと、愛美への愛が重い純情少年の星也が送るドタバタ学園コメディ。

有名イラストレーターAnmi氏の作品。星也を殺害するつもりが人間界での知識不足から空回りしてばかりのシエル、子犬のような愛くるしいシルエットもあってポンコツ可愛い魅力的なキャラクターです。そして、そんな彼女に殺されそうになっている星也はというと、夜通し愛美のマスコットキーホルダーを自作し、彼女の体を借りているシエルからの明らかな敵意も全て好意的に受け止めるかなり危険な少年。一度本当に殺されたほうが良いような気がします。

上記のように各キャラクターの個性も立っており、途中、異常なまでの星也への愛によって現世に霊体として蘇った愛美本人も騒動に参戦するなど、全体的に情報量が多く読み応えのあるストーリーでしたが、残念ながら3話のみの掲載。

主な登場人物:シエル、星也、ヨーコ、セツナ、お姉様、山田愛美

『アイコト』深山フギン)

掲載号:2012年4月号・5月号・6月号
❝いつも夢みてる 言葉と言葉の間にあるステキな気持ち だけど 私はそれをうまく言葉にできないから……❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2012年4月号』.芳文社.129頁)

クラスメイトの男子、吉野に思いを寄せる少女のアイは活舌の悪さから自分に自信が持てないでいた。そんなある日、彼女は放課後に立ち寄った神社で手に入れた奇妙な形のお守りに願いを込めたことで、見習い妖精だという少女、マヤと出会うことに。一人前の妖精になるためには契約した人間の願いを叶える必要があるそうだが、彼女にはそれをためらう”ある理由”があった。

どうやら契約が成立するとその人間の体は乗っ取られ人格を失ってしまうようで、人間の持つ豊かな感情に憧れるマヤは、妖精の生き方に反してアイに真実を隠し「吉野と話したい」というアイの願いが叶わないよう奔走するというストーリーになっています。

「この出会いは悲劇なのか?」という触れ込みの通り、真相を知らないまま、自身の願いのため、そして、マヤが一人前の妖精になるためにと前向きに努力するアイと、妖精としての宿命と人間への憧れとの間で葛藤するマヤとの対照的な様子が印象的で、定められたバッドエンドへ向かっていく展開には悲壮感を覚えます。

各登場人物の心情を繊細に描き、今後の展開にも期待が持てる作品でしたが、残念ながら3話のみの掲載。

主な登場人物:アイ、ミヨ、吉野、マヤ、ハク

『なりきりイミテーション』(著者:阿部かなり)

掲載号:2012年5月号・6月号・8月号
❝同い年の娘と二人暮らしって…って え 私が?❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2012年5月号』.芳文社.141頁)

母の妊娠をきっかけに、生まれてくる我が子のために良き姉となるべく修行を積むことを提案された少女、冬目みなりは母に言われるがまま引っ越し先で同い年でクラスメイトの少女、七草向子の姉として二人暮らしすることを余儀なくされるのであった。

妹役として紹介された向子はみなりよりも背丈が高く、学校でも皆から頼りにされるなど妹役としてはどう考えても人選ミスですが、そんな彼女を前にしても姉としてひたむきに努力しようとするみなりが健気で微笑ましく映ります。向子も向子で甘えられる存在ができたと満更でもない様子。そんな二人の温かな日常を描いた本作品ですが、向子を赤子に見立てて着替えや歯磨きの介助をする場面がどうしても”そういう”行為に見えてしまう自分の心の汚さが嫌になります。

また、向子は教室でみなりとの関係を隠していることを「そうしないと家の外でも姉として頑張ろうとするから」と語っていますが、事情が事情だけに余計な誤解を招きそうなので普通に黙っていたほうが良いだろうと思ってしまいました。

主な登場人物:冬目みなり、七草向子

『8’sエレジー』(著者:モノリノ)

掲載号:2012年6月号・7月号・8月号
❝この力がなければ 詩もたくさんの人に見てもらえるのに❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2012年6月号』.芳文社.123頁)

八千入(やちしお)高校に通う二年生、沖埜宿毛(おきの すくも)は他人に読まれることで内容が実現してしまう「詩」を書くことができる不思議な力の持ち主であった。そんな自身の力を知りながらも何かと付きまとう同じ寮生の後輩、山科優嫁(やましな さやか)に時に振り回されながらも、自身の持つその力の謎に迫っていくという物語。

制約付きの能力にバディ要素など、調理次第でバトル漫画にも、お悩み解決型のコメディ漫画にも舵を切れそうな面白い設定でしたが残念ながら連載には至りませんでした。全体的に日常パートが多く、折角の特殊能力を出し惜しみし過ぎている点が個人的に惜しいと感じました。

主な登場人物:沖埜宿毛、山科優嫁、月ヶ瀬梅子(つきがせ うめこ)

『ももいろhoney』(著者:かるは)

掲載号:2012年6月号・8月号・10月号
❝“リオは14才の夢見る女の子” “彼女は運命の人があらわれるのを待っていました”❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2012年6月号』.芳文社.145頁)

気楽な一人暮らしを満喫していた17才の少女、守山あきらの元にある日、差出人不明の誕生日プレゼントが届く。包装紙から出てきたのは、「運命の人」を待つという14才の少女を描いた”未完”の絵本、不良品と思い古本屋に売ろうと考えた矢先、本から飛び出してきたのはリオと名乗る少女だった。あきらを運命の人だと言い寄るリオが言うには、彼女と共に本に記された「試練」を受け、物語を完成させない限り元いた場所には帰れないようで……

出不精な少女あきらと煩悩まみれの少女リオが送るドタバタ日常コメディ。試練と題しつつも「3日以内にハグをする」「明日の朝まで手をつなぐ」など、なんとも可愛いらしい内容、連載が続けば試練の内容もエスカレートしていったのでしょうか。各話毎に絵本から提示された試練に立ち向かっていく明快なストーリー、仄かな百合要素など掲載紙のカラーに合った読みやすい作品でしたが、残念ながら3話のみの掲載。「絵本の完成が意味するものとは」「あきらとの出会いは必然だったのか」など多くの謎を残しながら物語は幕を閉じました。

主な登場人物:守山あきら、リオ

『けーたろいど☆コミュニケーション』(著者:なつきゆう)

掲載号:2012年6月号
❝携帯電話のこと?もう古いよー今はこの“ケータロイドシリーズ”が流行で…❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2012年6月号』.芳文社.165頁)

人形型自立式携帯電話「ケータロイド」が流行した世界を舞台に少女たちが送る学校生活を描いた作品。天真爛漫で機械音痴な主人公にケータロイドに詳しい親友ポジションの眼鏡っ娘といった定番のキャラ付け、良い意味で平成感溢れる大きな瞳が特徴的な絵柄など往年のホビーアニメを意識したであろう作風が特徴的です。

各登場人物の所持するケータロイドのデザインはよく練られれおり、メールを読み上げたり、手をつなぐことでアドレス交換する様子は非常に愛くるしいです。きららに玩具販促や少女漫画的要素を取り入れた意欲的な作品で個人的にも気に入っていた作品なのですが、残念ながら1話のみの掲載。

主な登場人物:ここあ、りく、コロン、みぃ

『プリ魔ドンナ! ー現在魔王侵攻中ー』(著者:シロウ)

掲載号:2012年7月号・8月号・9月号
❝我だってもう立派な魔王だぞ 勇者など一人でぎゃふんと言わせてやるぞ♪❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2012年7月号』.芳文社.184頁)

ここは「ワールド」と呼ばれる世界。そこでは幾重もの代を重ね「勇者」と「魔王」の闘いの宿命が繰り返されてきた。そして月日は流れ、子供の喧嘩クラスと成り下がった今でもその闘いは続いていた。そんな世界で魔王に君臨するサリエルは、いつものように勇者一行を返り討ちにするが、勇者の仲間であり異世界からの住人だという少女さとみに偶然アイドルとしての才を見出されることに。今、魔王サリエルによる”新たな形”での世界征服が始まろうとしていた。

長い時の流れの中で魔力を失ってしまったポンコツ魔王のサリエルがアイドル活動によって世界征服を目論むというストーリー。上記のあらすじからも分かるように情報量が多く、勢い重視の展開が特徴のハイテンションコメディ作品です。自身のプロデュースするアイドルたちの属性を鼻息荒くして熱弁するさとみの印象がとにかく強烈で、主人公であるはずのサリエルが霞んでしまっているほど。余談ですが、冒頭でサリエルと激闘?を繰り広げた勇者はゆっくりと物語からフェードアウトしていきます。

主な登場人物:サリエル、パルフィ、さとみ、ティファ

『みかりんバイトデイズ』(著者:ぼるぴっか)

掲載号:2012年8月号
❝その存在感の薄ささえなければ優秀なスタッフなのにな…❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2012年8月号』.芳文社.131頁)

ハンバーガーショップを舞台に、存在感が薄いが優秀なスタッフみかんと圧倒的な美少女だが仕事が雑な木下りんごの凹凸コンビが送るバイトストーリー。リンゴの接客態度が悪いのが原因とは言え、罵声にクレーム、スマイル強要などきららのバイトものにしてはやけに治安が悪いのが印象的です。幼馴染のりんごにすら気付かれないほど存在感の薄いみかんですが、終業後に店内にてポテトを注文した際には何故かあっさりオーダーが通りました。彼女の対応をした名も無き同僚は一体何者なんでしょうか。

主な登場人物:みかん、木下りんご

『ゆめおいドミトリー』(著者:なつきゆう)

掲載号:2012年8月号・12月号、2013年1月号
❝「夢」を見つけること とりあえずそれがあなたの「夢」ってことで❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2012年8月号』.芳文社.181頁)

田舎育ちで元気印の少女藤原ゆめは、農家の一人娘である自分はいずれ家業を継ぐものだと思いながら日々を過ごしていたが、ある日、次子が生まれたことで家族から無理に家業を継ぐ必要はない事を告げられる。突如として広がった将来の選択肢を前にして、初めて自身には明確な“夢がない”事に気が付いた彼女が焦るようにして引っ越した先の寮はなんと“夢を持つ”若者が集う寮なのであった。

同じ寮に住む獣医師志望の増川千歳、漫画家志望の遥佳(はるか)、アイドル志望の優佳(ゆうか)と共にゆめの「夢」を探す日常が始まる……という物語。

『けーたろいど☆コミュニケーション』に引き続き、萌え萌えした可愛らしい絵柄とそれに合った明快なキャラクターや物語が持ち味で、ホビー漫画的要素の強かった前作に比べてよりきらららしいオーソドックスな日常系作品に仕上がりましたが残念ながら3話で幕を閉じました。

余談ですが、なつきゆう氏のブログにて公開されている仕事履歴には、同誌で掲載された『けーたろいど☆コミュニケーション』は記載されていますが、本作品は記載されていません。記載漏れでしょうか。

主な登場人物:藤原ゆめ、増川千歳、遥佳、優佳

『らくキャス♪』(著者:やざわん)

掲載号:2012年9月号
❝今日も始まるよー ハッピーデータイムー!❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2012年9月号』.芳文社.126頁)

放送部に所属する音祢ひろい(おとね ひろい)と唄井舞(うたい まい)が送る「ハッピーデータイム」は何故かいつもハプニングだらけ。「もっと盛り上がる放送を」「アイドルになるため」それぞれの目標を胸に、少女たちは今日も自分の想いを放送に乗せていく。

きららでは定番ともいえる放送部を題材にした作品。放送部のイメージにマッチした比較的マイルドなキャラ付けで落ち着いて読み進められる緩さが持ち味です。曜日によって担当する部員も異なり、自身の担当日の評価を気にするちょっとしたバトル要素も。マンネリ化を防ぐため新コーナーを計画するエピソードなど放送部の自由度の高さを活かす工夫を感じます。

因みに本作品は、まんがタイムきらら2013年2月号・6月号にも掲載されており、ミラク掲載時にはいなかった放送部員も登場します。

主な登場人物:音祢ひろい、唄井舞、華朶里(きたり)

『ナニソレコワイ』(著者:むうりあん)

掲載号:2012年9月号
❝…墨坂さんは 複数の悪霊に取り憑かれています❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2012年9月号』.芳文社.153頁)

季節は春。新学期を迎え、新しくなったクラスに心弾ませる主人公、墨坂まゆ(すみざか まゆ)は、ある日、隣の席の御代田りりか(みよた りりか)に「悪霊に取り憑かれている」と告白されて以来、護衛のためと言い張る彼女に何かと付きまとわれることに。BL好きな隠れオタクまゆと一途な拗らせ系少女りりかが送る日常を描いた除霊コメディ作品。

ちんまりとした幼児体形のりりかの小動物的な愛くるしさが印象的で、スレンダーなまゆとの身長差も萌えポイント。保護者と被保護者の体格差の逆転は、こういったコンビ系作品としては今でも定番ですね。特徴的な大きな髪飾りも体育の授業では別のものに変えるお洒落な一面も可愛らしいです。

1話のみの掲載で、第1話は、りりかのストーカーじみた行動と、そんな彼女を放ってはおけずなし崩し的に付き合うまゆとの仄かな百合要素がメインで、オカルト要素は殆ど描写されなかったため、「まゆがどうして悪霊に憑かれるのか、そしてそれを知っているりりかは一体何者なのか」は明かされることのないまま物語は幕を閉じました。

因みに氏の作品の特徴である物語とは関係なく現れる動物たちはこの作品でも見られます。

主な登場人物:墨坂まゆ、御代田りりか、茅野千歳(かやの ちとせ)

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