惜しくも連載に届かなかった「ゲスト作品」、今となっては読む手段も非常に限られ、読者の記憶から忘れ去られるのを待つ一方となってしまいましたが、今に続くきららの長い歴史を支えてきた彼らの存在を風化させないためにも、私の知っている範囲で作品を簡単に紹介していきたいと思います。
※更新は不定期になります。連載作品のゲスト回は対象ではありません。
- 2014年1月号~
- 『RUN×BU』(著者:コウジ)
- 『全力パッションゲーム』(著者:ハル犬)
- 『ワケありずむ Complex』(著者:島崎無印)
- 『コナツトコナツ』(著者:四六屋)
- 『秘密のアイドル!』(著者:たかなしはると)
- 『ふぉーかす!』(著者:garnet)
- 『制服デイズ』(著者:クマノイ)
- 『やるきぬくもり』(著者:おさじ)
- 『はじめようSKR!』(著者:さくらいす)
- 『おばぁちゃんと一緒』(著者:IMA)
- 『たぬき、時々、きまま道』(著者:ちろり)
- 『アイデアルガール』(著者:シヴァ。)
- 『なのアドベンチャー』(著者:おさじ)
- 『きのこで作る魔法のレシピ』(著者:キキ)
- 『となりの百不思議』(著者:のちたしん)
- 『湯けむりシャボン』(著者:ねこみんと)
- 『魔法鉄道のヨル』(著者:小守ゆきち)
- 『隣人リンク』(原作:石見夕、作画:よしだひでゆき)
- 『メタコン!』(著者:40原)
- 『竜の森の午後』(著者:滝島朝香)
2014年1月号~
『RUN×BU』(著者:コウジ)
掲載号:2014年1月号
❝会長になったら最高の妻ってのになれるの?❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年1月号』.芳文社.164頁)
~あらすじ~
「最高の妻に必要なモノは圧倒的な力‼」
田舎からやってきた少女、嵐山 舞が編入した学園は、花嫁の修行の一環として生徒同士の争いを推進する型破りな学園だった⁉来て早々に戦いに巻き込まれる大波乱の初日、しかし、“ある人”を探しにきたという彼女の眼は真っ直ぐに輝いていて……?。カワイイだけじゃない‼熱血学園乱舞4コマ開幕‼
第1話から、「嵐を呼ぶ編入生登場‼➡内気な眼鏡っ子を庇い、ネームドに因縁付けられる主人公➡学園髄一の実力者である生徒会長とご対面」と、学園バトル物のお手本のような導入だった。「明るく能天気に見えて、キレると怖い」主人公あるある設定も完備。
平成の後期にもなって、ここまでコテコテの展開を見せられて一周回って感動した。きららにありそうでなかったジャンルだが、「なぜ今まで誰もやらなかったか」を結果で示して見せた作品。
でも、中等部を「中闘部」にするセンスは結構好き。
主な登場人物:柳 芽衣、皇麗子、東ヶ崎、皇美優
『全力パッションゲーム』(著者:ハル犬)
掲載号:2014年1月号・2月号
❝私達と一緒に 青春の淡い情熱を育てて見たくないかい⁉❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年1月号』.芳文社.172頁)
~あらすじ~
三度の飯よりゲームな乙女、竜桜りゅうおうは今日も落書きに夢中で授業も上の空。そして、そんな彼女が内に秘める“情熱”に何かを期待する少女が二人……。突如現れた杉村 咲花のパッション溢れる勧誘によって「ゲーム研究部」へ入部させられそうになる竜桜だが、彼女たちの作るゲームは、どうも○○○が微妙で?全力で作ります‼ゲーム開発4コマ始動。
ゲーム開発が題材の作品。プログラマーとリーダーはいるけど、肝心のキャラデザが……という所に絵が描ける主人公が入部するという王道な展開。
月刊誌のきららでは、展開を重視して部員集めパートで主人公が最後の一人というケースも多い中、第1話でキャラクターデザイナー、第2話ではサウンドクリエイターと、部員一人一人の入部描写に丁寧に話数を割いているのが印象的。
全力なのはゲーム作りだけではなかったが、部員集めに全力を出し過ぎて全2話で幕を閉じた。肝心のゲーム開発部分が見れなかったのが残念。
RPG好きの主人公が「りゅうおう」だったり、某星の戦士を想起させる著者名だったりと細部に遊び心を感じる。
主な登場人物:竜桜、並木、杉村咲花、蛇川 紅
『ワケありずむ Complex』(著者:島崎無印)
掲載号:2014年2月号~4月号
❝ここは「ワケあり」歓迎よ 幽霊も人間もね❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年2月号』.芳文社.180頁)
~あらすじ~
春から一人暮らしを始める女子高生、蝶野 繭子。格安女子限定の条件につられて契約したアパートは全室に幽霊が住み着く「ワケあり」物件だった⁉幽霊も変人も大歓迎‼ワケありな住民達が送るドタバタコメディ。
幼少期から幽霊が見えることで周囲から気味悪がられていた少女が、クラスメイトの管理するワケあり物件に入居するという物語。
主人公の住む一部屋だけではなく、アパート全体がワケありと言う豪快さ。その蘭子も、初日に自室で出くわした幽霊に一人部屋だから出て行けと賃貸契約書を見せる豪胆さを見せる。
妙に現世慣れしている幽霊たちの小気味よい幽霊トーク、電波少女に心霊マニアの同級生など霊にも負けない変人ぞろいの人間たち、ちょっとしたハートフル要素に加えて、アパートの管理人である大森 小巻の謎など、多岐にわたる要素をバランスよくまとめており非常に読みやすいと感じた。
内気そうで憂を秘めた少女という印象を受ける繭子、回想のいじめ描写などから少しほの暗い物語かと思ったが、第2話で現れたクラスメイトの変人っぷりに「あっ、これ大丈夫なやつだ」と安心させられた。心霊マニアが霊感無いのはあるある。
主な登場人物:蝶野繭子、大森小巻、北条 南、武者小路 姫子
『コナツトコナツ』(著者:四六屋)
掲載号:2014年1月号
❝冬の常夏荘に夏が来た…❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年3月号』.芳文社.90頁)
~あらすじ~
両親の海外出張に伴い、叔母の管理する“常夏荘”で独り暮らしをすることになった女子高生、神楽坂 小夏。不安と期待を胸に自室のドアを開ける彼女だったが、何故かそこには先客が⁉やさしいお姉様たちと着ぐるみ(?)な叔母に囲まれ、小夏のちょっぴり温かい独り暮らしが始まります。
女子高生×お姉さまが送るガールズ下宿コメディ。初日から年上の女性二人にパシらされる主人公が不憫だが、多めに持たされたお金で好きなものを買っていいと姉貴肌を見せる冬華たちが中々いい味を出している。因みにお金は足りなかった。
着ぐるみを着て家事を行うロリババアな叔母など、個性豊かな住人たちが送る下宿コメディが展開されると思われたが、残念ながら1話のみの掲載。
主な登場人物:神楽坂 小夏、梶浦 冬華、あきら
『秘密のアイドル!』(著者:たかなしはると)
掲載号:2014年3月号
❝私たちがFilosだってバレたら…❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年3月号』.芳文社.100頁)
~あらすじ~
地味でチビで内気な女子中学生の心音、先生にも忘れられてしまうくらい目立たない彼女には実は“もう一つの顔”があって…?超人気アイドルなことはみんなには絶対内緒‼心音のドキドキ学校生活開演です。
いつの時代も一定の人気がある「地味な女子中学生が実は人気アイドルだった⁉」モノ。少々ガサツなユニットアイドルの相方、七海との仄かな百合要素など全体的にきららナイズドされているが、正体がバレたらやるしかないと学校にスタンガンを持ち込む心音はどうかしている。アイドルだし護身用だと信じたい。
第1話は、扉絵の前に非4コマで1ページ余すところなく描かれた導入部分など、読者の目を引く工夫も見られたが、残念ながら1話のみの掲載。
主な登場人物:心音、七海、
『ふぉーかす!』(著者:garnet)
掲載号:2014年3月号~5月号
❝おや! 貴君 ずいぶんと良いカメラをお持ちだ!❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年3月号』.芳文社.132頁)
~あらすじ~
ある日、遠方の祖父から送られてきた古いカメラ。飯塚マリーは、カメラを手に思い出に浸りながら町へ出たが、道中で思いがけずカメラを分解してしまう。思い出のある品だっただけに動揺するマリー、そんな彼女の元に写真部を名乗る少女、百道 さよこが現れる。「今日はこのカメラを きちんと扱えるようにしてあげよう」カメラで広がるマリーの世界、その景色をちょっと覗いちゃいます。
カメラ×女の子4コマ。きららでもちょくちょく見かける題材だが、他と比較するとカメラの構造や仕組み等の解説にかなり力を入れている印象。フィルムカメラにフォーカスを当て、そのレトロな味わいを知ってもらいたいという熱意を感じる。
主人公のカメラは、フィルムカメラの名機として知られる「Leica M3」とかなり渋めのチョイス。レンズも「ズミクロン 50mm F2」という徹底ぶりで、著者のこだわりがうかがえる。因みに友人のさよこは、「ペンタックス SPⅡ」、「Zorki-4」
残念ながら3話のみの掲載、主人公たちの持つ機種が少々マニアックだったか。こういった趣味モノだと、本当にやるのかはさておき「自分にも真似できそう」と読者に思わせるのは結構大事なのだと再認識させられた作品。
主な登場人物:飯塚マリー、百道さよこ、星野さゆり
『制服デイズ』(著者:クマノイ)
掲載号:2014年3月号~5月号
❝だってスカート恥ずかしいだもん❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年3月号』.芳文社.156頁)
~あらすじ~
男の子っぽく見られることにコンプレックスのある女子高生、栞は今日も朝からジャージ登校。しかし、「制服」をこよなく愛する転校生、遥との出会いによって彼女の日々は少しずつ様変わりしていくのだった。友達を愛し、制服を愛せ…!女子高生制服物語開幕です。(本誌欄外より抜擢一部)
自分は女の子らしくないからと制服が着れない少女が主人公という、当時としては中々繊細なテーマを取り扱っている作品。LGBTという言葉が高校の教科書に初めて掲載されたのが2017年頃であるため、時代を一歩先取りした作品ともいえる。
とは言ったものの、温かみのある画風と“制服マニア”というもっとマイノリティーな趣味を持つ友人のおかげ(?)で、重たい雰囲気は感じない。地域や学校ごとに違う制服の特色と言った雑学要素や、栞を中心とした仄かな百合要素など、よく見るときらららしい要素もしっかりと兼ね備えていたりする。
遥との出会いをきっかけにコンプレックスを乗り越え制服趣味に目覚めていく……というような物語を展開予定だったのだろうが、残念ながら3話のみの掲載であったため、遥の熱弁も空しく栞は最後までジャージ姿だった。しかし、それもまた多様性なのかもしれない。
主な登場人物:鈴木栞、遥、早倉、ちなみ
『やるきぬくもり』(著者:おさじ)
掲載号:2014年3月号
❝だって… ぱんつはく元気なかった…❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年3月号』.芳文社.183頁)
~あらすじ~
季節は夏、帰省のためアパートを留守にしていた温乃は、一人残してきた下宿仲間の真森を心配していた。久しぶりの帰宅で様子を見に来た温乃の目に飛び込んできたのは、真夏にコタツ、コートまで着込んだ異様な森野の姿だった……無気力だけど、二人なら、ふかふかでぽっかぽかな下宿ライフはじまります。(本誌欄外より抜擢一部)
自堕落な生活をしてたら、物事に対するやる気と一緒に体温も下がるトンデモ体質になってしまった友人との下宿物語。
一刻も早く医療機関を受診するべきだが、肝心の真森は、下着を履かされそうになったり(?)、鍋を食べたり、ゲームしたり、温乃とイチャついたりと……いまいち緊張感が無い安定のきららクオリティ。
物語が続けば、あの手この手で真森の熱を取り戻そうとする温乃の奮闘劇が見られたのかもしれないが、残念ながら1話のみの掲載。
二人の名前を合わせると「守り抜くの」になるのはちょっと好き。
主な登場人物:温乃、真森
『はじめようSKR!』(著者:さくらいす)
掲載号:2014年3月号・5月号・6月号
❝SKRリーダー兼ウサマート店長のこはる 現役の女子高生だよ☆❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年3月号』.芳文社.190頁)
~あらすじ~
小さな町の商店街にあるスーパー「ウサマート」は、郊外にできた大手スーパー「ニャオス」の進出により閉店の危機に立たされていた。夜逃げした父の代わりに店を切り盛りする女子高生、小春は「SKR(商店街活性化連合)」を立ち上げこの危機を脱しようとしていたが、そんな彼女の店にアルバイトとしてやってきたのは、何と元ニャオスのスタッフだった⁉ドタバタ商店街復興コメディ開店です。
商店街を舞台にした女子高生のお仕事系4コマ。大手スーパーの進出により寂れてしまった商店街を若者の手で復興させるという王道ストーリーだが、漫画らしく奇抜なアイデアで解決‼……とかではなく、レジ打ちの正確さなどを競うチェックアウトコンテストで優勝することで知名度を上げる、と言う現実的な目標を立てているのが印象的。
小春が快活な性格なこともあり1コマでさらっと流されているが、小春の父は娘を一人置いて夜逃げしており中々闇が深い。商店街が盛り上がれば父も帰ってくるだろうという台詞が心に来る。
コンテストでの優勝を物語としての最終目標に掲げた上で、まずは客足向上のために抽選会を実施する堅実さ、もう一人の主役である涼香の謎に包まれたニャオスを離れた理由、お約束のライバル店舗のツンデレキャラなど、お仕事系4コマの基本を忠実に抑えていて非常に読みやすかった。
ライバル店のスタッフとのレジ打ち勝負では、正確さに欠けるものの心のこもった接客が持ち味と言う主人公らしい姿を見せた小春だったが、決め手になったのは接客……ではなく持ち前の怪力だったのは個人的に好き。
余談だが第3話では、涼香が何故か“涼風”と呼ばれている。新キャラなのかな?と何度か読み返したが、間違いなく涼香なのでおそらく誤植と思われる。
主な登場人物:朝生 涼香、小春、藤原、吉祥院 さつき、穂坂
『おばぁちゃんと一緒』(著者:IMA)
掲載号:2014年2月号
❝途中で足腰が立たなくなってしまって……❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年4月号』.芳文社.102頁)
~あらすじ~
転校してきたのはおばぁちゃん⁉これが新しい萌えの形になるのか……?ちょっぴりおばぁちゃん(?)な女子高生、東雲 春花とその仲間たちが送るおっとりスクールライフ。
冒頭にて、転校のあいさつに来た春花に「お おばあちゃん⁉」と、クラスメイトの忍が声を荒げたところから始まった本作品。この時点で、亡くなった祖母が転生したとかファンタジー路線を想像したが、実際はあだ名がおばあちゃんなだけだった。
その後は、女子高生なのに妙にババ臭い春花の日常が描かれ物語は1話で幕を閉じた。おばあちゃんなだけあって作品も短命だった……。
どうでもいいかもしれないが、作中では「おばあちゃん」呼びなのに、タイトルは「おばぁちゃん」なのが気になる。
主な登場人物:忍、ユウキ、東雲春花
『たぬき、時々、きまま道』(著者:ちろり)
掲載号:2014年4月号~6月号
❝別れはいつもなんとなく寂しい 付いて行ってみたい気持ちもあるけれど…❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年6月号』.芳文社.190頁)
少女に化け人間社会で暮らすタヌキのつぐみと人間たちの出会いと別れを描いたハートフル4コマ。オムニバス形式の作品で、各話ごとのつながりはない。
第1話は、野良犬に襲われていたのを助けてくれたことをきっかけに遊ぶようになった人間の少女、岡村愛子が進学を機に東京へ引っ越してしまう……と言う話なのだが、プレゼントを贈り合い感動的な別れをした次話で何事もなかったようにゲーセンにいるつぐみに初見ではびっくりする。
なぜ少女に化けるのか、なぜ制服を着ているのか、そんな深いことは考えてはいけない。つぐみの日常をただきままに眺めるそんな作品。
主な登場人物:岡村愛子、つぐみ、アヤ、翔平、一花
『アイデアルガール』(著者:シヴァ。)
掲載号:2014年4月号・6月
❝でも大好きななっつんと話せる ありえないようなチャンス 私はいったい どうすれば…❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年4月号』.芳文社.184頁)
物語は、学校ではアイドルオタクであることを隠している少女、清水えりが自宅で推しの美雪なつみについて熱く語り始める場面から始まるのだが、「あーこれは絶対なつみが転校してくるやつだ」と思ってたら案の定そのパターンだった。
第1話では、アイドルのプライベートを詮索するのはよくないなどと言っていたえりだが、続く第2話では、なつみを自宅に呼んでは勝手にオタク語りをはじめ、彼女に抱き着きツーショット写真をねだるばかりか、挙句の果てには「一緒に住まわせて‼」とまで発言するとんだ厄介オタクになってしまう。
一応擁護すると、友達になってほしいと言い出したのはなつみの方で、上記の絡みも特に嫌がっているわけではない……のだが、それが余計にオタクの願望丸出しって感じがしてしまう。
珍しくネガティブなことばかり書いてしまったが、たぶん同族嫌悪。
主な登場人物:清水えり、美雪なつみ、清水えみ
『なのアドベンチャー』(著者:おさじ)
掲載号:2014年4月号~5月号
❝さあ早速私達の領土を奪還しますわよ!!❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年4月号』.芳文社.206頁)
~あらすじ~
山で平穏に暮らしていた小人のミィとユゥは、人間の住宅開発によって住む場所を失ってしまう。領土奪還を目指す二人は、人間の少女である菜乃のカバンに潜り込み、人間の弱点を知ろうと画策するが、彼女は友達のいない引きこもりがちなよわよわ人間なのだった……。
人間からの領土奪還を目指す小人(?)との異種間同居モノ。菜乃は二人からしてみれば故郷を奪った憎き人間なのだが、友達がいないということで同情した二人に家来にされることとなった。
ファーストコンタクトした相手が悪かったこともあり、人間の弱点は分からず、侵攻作戦も開始することなく物語は平穏に幕を閉じた。
主な登場人物:ミィ、ユゥ、菜乃
『きのこで作る魔法のレシピ』(著者:キキ)
掲載号:2014年5月号~7月号
❝世界一の魔女になるべく日々修行を怠らない 生粋の見習い魔女であるぞ❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年5月号』.芳文社.64頁)
~あらすじ~
学校から帰ってコーヒー飲んだら魔女と契約させられちゃった⁉
母が淹れてくれたコーヒーと勘違いし魔女の「誓いの薬」を飲んでしまったことで、魔女見習いのモナカとの同居を強いられることになった海月。威厳のある口調のわりにへっぽこなモナカ、そんな彼女に何かと世話を焼いてしまうお人好しな海月と使い魔(?)のオリヴィアが送るドタバタ魔法コメディ。
ひょんなことで、のだロリ魔女と契約させられてしまった不憫な少女の摩訶不思議な日常を描いた物語。
海月のことを一ヶ月も前から観察し、誓いの薬を意図的に誤飲させるように仕向ける策士ぶりを披露したモナカだったが、契約後の活躍はへっぽこの一言。しかし、冒頭の悪行が嘘だったかのような純粋でひたむきな姿勢が何だか憎めない。海月世話を焼いてしまうのも何だかわかる。タイトルの「魔法のレシピ」が海月と仲良くするための薬のことを指していたのもほっこりする。
カボチャ頭のカオナシみたいな使い魔、オリヴィアが個人的にお気に入り。筆談キャラでモナカたちを温かく見守る保護者ポジなのだが、変に出しゃばりすぎず、幼いモナカの気持ちを簡潔に代弁したり、彼女の頓智来な提案に何も言わずに協力してくれたりとマスコット力が非常に高い。表情が(▼ω▼)で固定されているのも何とも言えないゆるさを感じて好き。
このマスコットキャラの愛らしさは次回作の『ビビッド・モンスターズ・クロニクル』でも生かされている。
主な登場人物:海月、モナカ、オリヴィア、桜もちこ
『となりの百不思議』(著者:のちたしん)
掲載号:2014年5月号~7月号
❝私には人には言えない秘密があります それは― 人には見えないモノが見える…ということである❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年5月号』.芳文社.97頁)
~あらすじ~
幼少期から学校の怪異が見えてしまう体質が故に人付き合いが苦手になってしまった少女、朝凪 詩春は今日も周囲から気味悪がられながらも学校の怪異たちの話し相手をしていた。そんなある日、自分と同じ怪異が見える転校生の藍染 未冬と出会ったことで彼女の日常は動き出す。ちっとも怖くないよ‼学校の怪異たちが送るストレンジコメディ。
学校の怪異の美少女化を題材にした日常コメディ。主人公の詩春は怪異が見えるという特異体質の持ち主だが、その力を活かして学校の事件解決‼……みたいな物語ではなく、何気ない日常での怪異たちとの会話がメインとなっている。
詩春たちの特異体質や怪異の存在についての説明は特になく、深いことは考えずに登場人物たちのその場の掛け合いやノリを楽しむタイプの作品。「トイレの花子さん」が“さん”と“ちゃん”で固体が別になっているのが面白い。
急に愚痴っぽくなるが、欄外で登場人物紹介を設けるなら1話目からやって欲しい……。特に本作品のような設定よりその場の掛け合いを優先するような作品なら尚のこと。私のように後から続けて読むならまだいいが、リアルタイムで読む人からすれば月刊誌の3話目にお出しされても正直もう遅い。話を理解するまでにかなりラグがあった。
2話までは登場人物の整理がつかなくて正直読みづらいと感じたが、3話の欄外の補足でようやくキャラが掴めたことで物語の楽しみ方が分かってきただけに、これが1話目からあれば……と少し残念に思ってしまった。
学校の怪異の美少女化というキャラクターのバリエーションの事欠かなさそうな題材、第2話での「怪異は知名度によって力を得る」という重要そうなのに結局拾われなかった設定など、個々の要素が良いだけに惜しいと感じる作品だった。
主な登場人物:朝凪詩春、朱雀院 ゆうひ、藍染未冬、こっくりさん、花子さん&ちゃんちゃんこ
『湯けむりシャボン』(著者:ねこみんと)
掲載号:2014年6月号・7月号
❝よぉし!銭湯同盟結成だね!❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年6月号』.芳文社.140頁)
~あらすじ~
地元の音楽専攻の学校がなくなったことで、春から親元を離れて一人暮らしを始めた高校生、熱海 彩は家のお風呂の故障がきっかけで人生初の「銭湯」に行くことに。暗黙のルールにおびえながら意を決して戸を開けた先にいたのは……。あなたも“銭湯同盟”に入りませんか?ほんわかまったり銭湯物語開幕です。
カメラと並んで定期的に見かけるきらら定番(?)の“銭湯”を題材にした作品。銭湯内での暗黙のルールの紹介に、風呂上がりのフルーツ牛乳をかけた長風呂勝負と、あるあるネタをふんだんに盛り込んだ手堅い作りだった。
それにしてもこの“銭湯”という題材、ゲスト・連載問わずいつの時代にも定期的に現れるが、連載させることを前提に考えると中々難しい題材だと思う。
あるあるネタや暗黙のルール、風呂の効能だけで最低でも24話分のストーリーを用意するのが苦しいことは素人でも容易に想像できるし、後発になればなるほどそれは顕著になる。実際にこの題材で連載を勝ち取った作品を見ると、舞台を旅館にしてお仕事要素を、全国の名所を巡ることで旅行要素を取り入れるなど、風呂一辺倒にならない工夫が多くみられる。
身近な存在故にとっつきやすいが、長生きさせるにはべっとりついた手垢を洗い落とす創意工夫が必要な意外と奥深い題材だったりする。
主人公の熱海で気付くと思うが、メインキャラの苗字は日本の有名温泉が由来。
主な登場人物:熱海彩、白浜 小梅、武田尾 もみじ
『魔法鉄道のヨル』(著者:小守ゆきち)
掲載号:2014年7月号~9月号
❝今夜 本の駅に来てください 覚えがあればですが❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年7月号』.芳文社.112頁)
~あらすじ~
本が大好きな少女、熊野まゆはある日、図書館で先生から「願いを書けば叶う」と書かれた説明書が同封されただけの真っ白な不思議な本を手渡される。説明書に従い、願いを書いて眠りについたまゆは、ふと気が付くと無人の駅に立っていた。戸惑うまゆの前に突如現れた魔女のような風貌をした少女、ルトとの出会いをきっかけに彼女の日常は大きく変化する。その電車はどこへ向かうのか……まゆの叶えたい「願い」とは何なのか……夢と現実が交差するオカルト・ファンタジー出発です。
………多分そんな話。どうしてそんなに歯切れが悪いかと言うと、上記のあらすじで書いた以上のことが何も分からないからである。
「本の駅」がどうとか「体を借してほしい」だ、「キップ」だ「カケラ」だ、「兄の開放」が何だと、何の説明も無しに次から次へと意味深な発言が飛び出すが結局最後まで読んでも何も分からない………。ただでさえ話の道筋が一向に見えてこないのに唐突にバトル要素まで出てくるからもう収拾がつかない。読み切りならぬ“逃げ切り作品”。
肝心の魔法鉄道だが、主人公は一度も乗ることはなかった。因みにめっちゃ近代的な電車で風情もへったくれもない。タイトルから連想される某有名童話のようなものを期待していると少々がっかりする。
そもそも、こんな訳の分からない怪しい本を主人公に手渡した先生は何者なんだ………それも分からない。だって1話にしか出てこないのだから。とにかく全体的に説明不足な作品。でも作者の熱意というか、やりたかったこと、見せたかったものは何となく伝わる、良く言えば“意欲的な作品”だった。
主な登場人物:熊野まゆ、ルト、メリノ
『隣人リンク』(原作:石見夕、作画:よしだひでゆき)
掲載号:2014年7月号・8月号・10月号
❝ボランティア部の…部長?❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年7月号』.芳文社.120頁)
~あらすじ~
何処にでもいる平凡な女子高生、山田 吉野は半ば押し付けられるようにある部活の部長に任命されてしまう。そこは、問題児(?)たちが集まる曰く付きの部活「ボランティア部」だった。果たして吉野は、一癖も二癖もある部員たちと共に平和に部活動を行い、彼女たちを更生させることができるのか⁉どたばたボランティアコメディ始動‼
頼みごとを断れない平凡な主人公が、問題児の更生を目的にしたボランティア部の部長に任命されるという部活モノとしては割と王道な展開。
問題児といっても、サボり魔に居眠り常習犯、推薦狙いの高飛車お嬢様とか、そこまで深刻な事情を抱えているわけでもなく、何だかんだ言いつつもボランティアに従事してくれる付き合いの良い人たちである。
活動内容は、部室の掃除から迷子の保護など多岐にわたりボランティアというより便利屋と言ったところ。一応作中で吉野が「隣り合った人を少し助けることができたら」と言う活動目標を掲げており、タイトル回収っぽいこともしている。
余談だが、吉野は第1話の中盤で雛璃に似合っているとアドバイスを受けて以降ずっと眼鏡をかけており、途中での主人公の眼鏡っ子化という中々挑戦的なことをしている(因みに伊達メガネ)。そんな吉野だが、控えめな性格が仇となったか、お嬢様キャラの姫河 雛璃に主人公のポジションをかなり食われ気味になってしまっている。
主な登場人物:山田吉野、姫河雛璃、拂里 灯、犬山 黒ヱ
『メタコン!』(著者:40原)
掲載号:2014年7月号~9月号
❝見て驚け!これこそが私の最高傑作! 世界初の二足歩行型メタルフレーム! かれん式二足歩行機Mark1❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年7月号』.芳文社.133頁)
一言でいうなら「すごく豪華なロボコン」第1話を丸々使って有人型の二足歩行ロボットを盛大に紹介し、何をするかと思えば“ブロック運び”だった。もっと色々あるだろう………。
二足歩行タイプは主人公たちの機体が世界初らしいが、元の工業ロボット「MF(メタルフレーム)」なるものは、この世界では一般に普及し、高校の部活動にもなっているくらい身近なものらしい。
こんな大掛かりで物騒なものが、なぜこんなにも普及したのかは作中では特に触れられていない。真っ先に軍事転用されそうなものだが、そこはきららクオリティ、MFは宇宙怪獣やスペースノイドと戦ったりなんてしない安全なマシンなのである。
主人公と思われるサキが初操縦にもかかわらず、製作者の娘であるすみれよりマシンを乗りこなすというお約束展開も完備。メカオタク属性まで盛られた生粋の主人公気質なのだが、記念すべき初陣で操縦したのはすみれでサキは観戦者だった。
因みに肝心のMFバトルは、機体性能云々とかではなくルールの穴を突き合うような、リアルのロボコンを意識したような戦いだった。せっかくの二足歩行なのにその持ち味が生かされることは特になかったのが残念。
主な登場人物:サキ、すみれ
『竜の森の午後』(著者:滝島朝香)
掲載号:2014年7月号~9月号
❝まあ竜の森に入る人間なんて大体訳アリなんだろうけどさ!❞
(引用/『まんがタイムきららミラク2014年7月号』.芳文社.166頁)
~あらすじ~
そこは、「竜の森」と呼ばれる不思議な森。森の守り人であるジルは、川でのんびり釣りを楽しんでいた。そこへ血相を変えて何かを知らせに来た相棒のケットシー・ニケ。彼が言うには森の中で人間の少女が倒れていると。家へ連れ帰り話を聞く二人、ソフィと名乗るその少女はどうやら“訳アリ”のようで………。
ミラクでは、“うらら”や“アンネッタ”に続く久しぶりのハイ・ファンタジー。竜の森と呼ばれる曰く付きの森で暮らすジルとニケ、そして何やら事情がありそうな人間の少女のソフィが送る森での日常を描いた物語。
全3話だが、ソフィが何故、危険といわれる森へやってきたのかは最後まで明かされることはなかった。第2話で、ソフィは実は西の国の王女で本名はソフィア・オーランドであるという重要そうな情報が判明するのだが、興味のなさそうなジルたちにあっさり流されてしまった。
物語は基本的に、森での暮らしや、そこに生息する動植物たちの描写がメインで、ストーリーがどうこうというより異世界でのスローライフ要素を楽しむ作りになっている。森で獲れる生き物を使ったグルメ要素が豊富で、連載が続けばそっち方面に舵を切っていたかもしれない。
主な登場人物:ジル、ニケ、ソフィア・オーランド

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